涙と花片。

□夢見る金魚。
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ふわり、ふわり・・・

宙を漂う金魚は溺れる。



私はただ、涙を流すだけ。















‡夢見る金魚。‡















大好きだった。


初めて「全てが欲しい」と思った。





でも・・・何も得られなかった。










「・・・別れたんだって?」


「・・・・・」





伸ばした手は、意ともあっさり振り払われた。

解っていたのに・・・



私たちを繋ぐ糸は、ぷつりと切れてしまった。










「・・・お似合いだ、と思ったけどね?」



「・・・・・」





彼との思い出・・・

どの位、残っているだろぅ?





指を折っても、また"1"に戻る。

私は・・・何をしていた?










彼の笑顔が好きだった。

少し俯いて、照れたように笑う顔が可愛かった。





彼の声が好きだった。

少し高めの掠れた声に胸が鳴った。





彼の全てが・・・





「・・・そぅか・・・」





彼が、私の全てだったんだ・・・



残るものなんて、有る筈ない。








そして不器用な恋は終わり
新たな水を求めて疱(もが)き出す。



その日まで・・・



この不安定な空気の中で



静かに眠ろう・・・。





end。

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