V.Boys

□米山裕太 【嫌なやつ】
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俺、アイツ好きじゃない




こんなこと

言っちゃいけないけど、

好きじゃないんだ…。



【嫌なやつ】


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「はぁ?何言ってんの。早く動いてよねっ!!」


キンキンと響き渡る、鼻につく声

今日は練習がないかわりに、事務的な仕事があるんだけど…


まじでうるさい……。


「コピーしとけっていったのに!あぁもうっ」


社内で一番美人

だけど、

社内で一番気が強い
社内で一番性格が悪い



久しぶりに本社に顔を出して見れば、そうだった

俺の嫌いな女がいるんだ



「ちょっと、ボケっとしないでよね!そこ邪魔よっ」


下を見れば、高いヒールを踏み鳴らしてイライラとした顔のアイツ


「ごめんね、高島さん」



ヒョイっと避けると、器用に小回りをきかせて颯爽と歩いていく


仕事は、出来るみたいなんだけどな


でも、好きになれるタイプじゃないな。
……友達としても。









作業中、コーヒーが飲みたくなり
社員専用の給湯室へ足を運んだ


「だからっ…しつこい!」


いつもより数
倍イライラした声が、廊下まで漏れている


「ねっ?お願いだから一回だけヤらせてよ〜」



あぁ、そういう誘いか。



いつもならフォローを入れたりするけど

彼女なら慣れてるだろうし、邪魔しないほうがいいかな?



立ち去ろうとした、その時




「あたしは結婚するまで…そっ……そういうのはしないのっ!……こ、こうみえて……その……しょっ、処女なのよっ!!!」



耳を疑った



社内では、芸能人やイケメンにしか抱かれない

経験した数は3桁

ひどいのでは、2回ほど中絶してる


なんて噂がある。



もちろん信じてたわけじゃないけど、
彼女ならあるかもしれないっていう
勝手なイメージはあった。



そんな彼女が、言葉につまりながらも
顔を真っ赤にして断っている



……。



なんか、可愛いな。



「ごめんね。この子、俺の彼女だから」


そこからはもう全て無意識で、
そっと肩を抱いて人気のない所へと連れ去る



「はっ、離しなさいよっ!!」



「顔真っ赤だね?」



「……なっ!!」


「あははっ、なんか可愛いなぁー」


「かっ!…かわ
いい!?」



真っ赤だった顔が耳まで赤く染め上がっている


よほど恥ずかしいのか、
いつもの自信に満ちた姿からは
想像がつかないくらいモジモジしてる



「そんな事言って…どうせあんたも身体目当てでしょ?」



強気な口調でも、瞳の奥はとても悲しそうで
妙な気持ちになる



「俺ね、今まで君の事が嫌いだったんだ」


え、と一言漏らし哀しみで顔が歪んだ


でもね?


「今日初めて、君の内面に触れて…とても可愛くて綺麗だと思った」


見た目とは違い、表情が豊かなのか
哀しみで満ちた顔は嬉しそうに綻んだ


「私自身を見てくれたのは、あなたが初めて」



彼女は



可愛くて、綺麗









「連絡先、教えてくれない?」





嘘、君は嫌なやつなんかじゃないよ



end






*おまけ*




「おっ、教えてあげてもいいわよっ!悪用しないでよねっ?」


あと、彼女はツンデレです

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