V.Boys

□横田一義 【可愛い俺、可愛い君】
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横田一義【可愛い俺、可愛い君】



可愛いじゃなくて、
『カッコイイ』がいいのに



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「はるー!」


「カズくーん!」


「おはようさんっ!」


「おはよう!カズ君今日も可愛いっ!!!」




付き合ってからというもの、デートは必ずこの言葉から始まる


最初は、可愛いって言うてくれるだけで嬉しかったけど

やっぱり男は、可愛いより『カッコイイ』て言うてほしい



「むー……」


ちょっとだけ、ほんのちょっとだけ不貞腐れてみる

ガキって分かってても、やっぱりカッコイイがええ…


「カズ君どうしたの?」


「可愛いいやなくて、カッコイイがえぇよ…」


「キャーッ!そういうとこが可愛いんだよっ」


ぴょんぴょんと跳ねながら俺にだきつく、はる


俺から見たらそんなはるの方が、可愛さ100倍や


ちょっとドジだけど、いつも明るく笑顔なとことか
前向きで素直なとことか


俺、ホンマべた惚れや…
気持ち悪いわ、自分(笑)



「ねぇっ、今日はカズ君の好きな雑貨屋さんに行こうよ」


「じゃあ歩いて行かへん?」



「わーいっ!たくさん手つなげるね!!」


嬉しそうに笑うはる


かっ…かわえぇ!


「ん……なら行こか?」


きゅっと包み込んだ小さな手

ここまで人を好きになったん、初めてかもしれん








「金で謝れって言ってんだろーが!!払えねぇとか言うんじゃねーぞ!」

すぐ横の公園から聞こえてくる怒鳴り声


喧嘩かなんかやろうけど、…朝から勘弁してほしいわー



「ちょっと待ちぃや……「こらぁぁぁぁああっ!!やめなさぁぁぁぁああああいっ!!!」



ぎょっと、はるのほうを見れば
ズカズカと喧嘩に割り込みにいっている


「あちゃー…そうやった……」


真っ直ぐすぎて、間違ったことには後先考えず行動するんやったわ

「こらっ!お金は湧いてでるものじゃないの!きっと今は金欠なのよっ。気長に待ってあげなさい!!」


……そこかいなっ!


「ぁん?うるせぇなぁ。女は口出しすんじゃねーぞ」


勢いよく押されたはる


…あかん、倒れる


「わわっ!」


―ポスッ


「かっ、カズ君!?」


「バレー選手の瞬発力なめたらあかんで!」


ギリギリ支えることができた

一安心や…


「おい、はるに手だすなんてえぇ度胸やな。」


「かっ…カズ君…私なら大丈夫だよ?」


「はる、えぇから。俺のはるに手出すなんて今すぐ投げ飛ばしたいぐらいや」


オロオロと、心配そうに見上げてくる


「カズ君は力もあるし、殴ったら相手の人もたくさん痛い思いしちゃうよ……」




嗚呼、ホンマにかなわへんわ


カッコつける 隙さえない



「殴るのは勘弁したる。けどな、次手ぇだしたらただじゃおかへんからな」


凄味を効かせた声に怖じ気づいたのか、慌てて逃げていった男達

途端、


「無事でよかった…」


ちっこいはるを強く抱きしめた


「あのね、」

「うん」

「カズ君にはね、数えきれないぐらいの魅力があるんだよ?」

「可愛いところはもちろん、今日みたいにカッコイイところや、高く飛んでバレーをするところ……。」

「……」

「私にはもったいないぐらい、たくさん良さがある」


抱きしめられているせいで、少しくぐもったこえが

深く、深く、心に染みていく


ありがとう
俺を好いてくれて

ありがとう


だから、
これからも好きでいさせてくれへんかなぁ
?




「俺な、ホンマにはるが大好きや」



いつもより、くぐもったはるの笑い声が
朝の公園に、静かに響いた

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