キリリク
□犬猿と愉快な仲間達
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「っうわ!?」
自分の首に後半分を巻こうとした時、腕を引っ張られそのまま後ろから抱きすくめられる。
「なんっ!…犬飼?」
顔を上げ後ろを見やるとそこには犬飼。
「…とりあえず、これで暖かいだろ」
犬飼が人前で猿野を抱き締めるなんて予想だにしない行動をとったため、そこに居た部員は目を見張る。
猿野はというと、一瞬驚いた顔を見せたが自身を抱き締める腕に手を重ね頬を赤く染める。
「…おう」
「他の奴にくっついてんじゃねーよ。バカ猿が」
「じゃぁ俺がフラフラしないように見張ってろよ、犬飼キュン」
広い胸板に背中を預け肩に頭を乗せ見上げる。
「んで、寒い時はいつでもこうしてろ」
ニッと笑ってみせて重ねた手を小さく握る。
「ちょ、ちょっと、猿野君達僕らの存在忘れてないッスか?」
目の前で友達の熱々っぷりを見せられて子津が小声で隣にいた辰羅川に話し掛ける。
「…そうみたいですね。まさか犬飼君が、私達の目があるにもかかわらずこんな事をするなんて……アンビリーバボーです」
「本当そうだよね!犬飼君って案外大胆な事するんだねー。ねっ、司馬君」
問い掛けられた司馬も驚いた様子で頷く。
「まぁ、最近は忙しくて、中々二人の時間を作れなかったのも原因でしょう」
辰羅川はしょうがない、という風に肩を竦めてみせる。
「だ、だからってこんな場所で…」
二人の世界を作り上げている犬飼と猿野を一瞥し子津は顔を赤らめる。
「子津君ってば、ピュアだね〜」
「だって、知ってる人が恋人とイチャイチャしてたら何だか見てるこっちが恥ずかしくならないっスか!?」
「まぁーね。でも、今回は恥かしいってよりビックリの方が大きいかな」
「犬飼君は勿論、猿野君も意外と恥ずかしがるタイプですからね」
辰羅川の言葉に納得したのか、そこで会話が途切れ視線を渦中の人物達に向ける。
「…猿、」
「あ?…何だよ」
「お前は俺だけ見てれば良いんだよ」
「……コゲ犬も、よそ見してんなよ?」
犬飼の腕の中、肩に頭を乗せたままでいた猿野。
本当に状況を忘れてしまっているようで、銀髪が猿野の顔に掛かり唇が近付く。