キリリク
□犬猿と愉快な仲間達
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世間様に胸張って公言出来る関係じゃない。
だから事実を知っていてなお、二人のぎこちない恋を暖かく見守ってくれる仲間の前だとついつい張っていた気を緩めてしまう。
正直今の俺らには、お互いしか見えてません!
【犬猿と愉快な仲間達】
いつも通り練習を終えた野球部。
部員達は帰る準備をしていたが、何やら一年に羊谷から話があるらしく皆制服に着替えグラウンドに集まっていた。
だが、
「遅い」
集合をかけた本人が中々姿を現さないのだ。
「何かあったんスかね」
「知らねぇよ。…あのヒゲ親父めぇ……、寒いし!!」
部活中は動いているため平気だったが、何もせずただ待つには少々気温に問題がある。
「ん?…うーわ、見ろよあのカップル!」
猿野の指差す先は今帰りらしい一組のカップルが。
男が女の肩に腕を回し、密着して歩いている。
「ラブラブだねー!!歩きづらくないのかな?」
寒さをしのぐ為かピョンピョンと跳ねながら兎丸が疑問を口にする。
「そこじゃねぇよスバガキ!あれ絶対ぇ暖かいだろ!!」
「なんだ。兄ちゃん、羨ましがってるだけ?」
「なっ、ぐぬぬ…そんな事は……!」
ない、と言い切れずチラと横目で自身の恋人である犬飼を窺う。
すると犬飼も二人のやりとりを聞いていたらしく視線がぶつかる。
「…めーいちゃん」
まさか猿野が自分を、それも名前で呼んでくるとは思っていなかった犬飼は反応出来ず固まってしまう。
「…なーんて。子津っちゅー!!マフラー貸せ!」
「はっ!?ちょっと猿野君!!」
行き成りのターゲット変更に焦ったのは子津。
首に巻いていたマフラーをはぎ取られる。
「しょうがねぇなー…、半分で我慢してやる」
半泣き状態で慌てる子津に猿野は優しさのつもりか、一緒に一つのマフラーを使う妥協案を提案する。
しかし、その提案はまず子津に半分巻いたところで失敗する。