季節物
□恋の自覚
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【恋の自覚】
「よーっす!子津っちゅー、明けましておめでと〜」
「明けましておめでとうございます、猿野君」
俺は今、子津と待ち合わせして初詣へと向かっている。
まず沢松を誘ったのだがあいつは彼女と約束してるとかで断りやがった。
……沢松のくせに。
子津は家族と過ごすだろうからと誘うのを遠慮して、どうすっかなーと悩んでいたときに逆に子津からお誘いを受けたのだ。
それにしても。
「男二人で初詣も中々寒いよな」
「まぁまぁ、仕方ないじゃないっすか」
「まぁな〜」
気温も心も寒いとか辛いんだけど。
マフラーを口元まで引っ張ってからコートのポケットに両手を突っ込む。
「てか、良かったのか?子津っちゅーの事だから家族と一緒にいたいと思って誘うの躊躇ってたんだけど」
「あ、そうだったんすか?去年までは家族と過ごしてたんすけど、たまには友達と行ってきたら?って言ってくれたんで」
「ほぉー、そんで俺を誘うとかお目が高いな」
さすが子津っちゅー、分かってる。
それから他愛もない話をしてたら目的地の神社に着く。
「うーわー…」
「さすがに…人多いですね…」
まぁ分かってたけどな〜。
人酔いしないタイプで助かった。
「迷子になるなよ、子津っちゅ……って、あれ?」
横を向いて告げるがさっきまでそこにいた子津の姿はなく。
「嘘だろー…」
着いて早々はぐれるとか…。
…子津君てば影薄いからもう見つけだすの無理じゃないかしら。
人波を出来るだけ避けて少しだけ開けたスペースに行って携帯に電話をかけるが、出る気配はない。
「どうするべきか……、ん?」
思案しながら辺りを見渡すと見覚えのある銀色が見えた。
…新年早々犬飼に出くわすとは……。
コゲ犬も何だかキョロキョロとしている。
「…………!」
あ、目合った。
「猿…」
言いながら近付いてくる犬飼。
「おー、犬っころ。新年から一人か?」
からかう様に笑えば少し不機嫌そうに眉を寄せる。
「辰と来たんだがはぐれたんだ。お前こそ一人か」
「俺だって子津っちゅーと来たけど子津っちゅーが、はぐれたんだよ。」
子津っちゅーが、を強調する。はぐれたのは子津であり俺ではない…はず。