other
□自分勝手な想い人
1ページ/4ページ
部活中、投球練習を行っていた原田・永倉バッテリー。
しかし、まだ始まったばかりだというのにふいに巧が豪の元に歩み寄る。
「豪」
「何じゃ?巧」
「お前、今日変」
巧の言葉に豪の表情が硬くなる。
自分勝手な想い人
「そんな事ない」
「ある」
すぐさま返されて豪は居心地悪そうに俯く。
「何かあったのか?」
「何も、ない」
明らかにいつもとは様子が異なるのにそれを隠す豪に巧の眉間にしわが寄る。
「言えよ」
「何もない言うとるじゃろ!」
しまった、と思っても時既に遅し。怒鳴ってしまえば巧の眼にも怒気の色が浮かぶ。
「そうかよ。何もない、じゃなくて俺には言えない、だろ。」
弁解しようと必死に頭を働かせるが、元来嘘を吐いたり、誤魔化すのが得意ではない豪には状況を治める言葉が浮かばない。
「もう良い、集中しねぇで俺の球受けられるかよ。やる気ないなら帰れ」
「っ、…はぁ」
何かを堪えるように溜息を零す豪に巧は眉間のしわを深くする。
「言いたい事があるなら言えよ」
「……」
言う気はないらしい豪の態度。
「…勝手にしろ。もうどうでも良い」
諦めた様子の巧の言葉に豪が反応する。
「…とって、」
「あ?聞こえない」
「巧にとって、俺はどうでも良い存在なんか!?」
聞き返せば、返ってきたのは予想外のセリフ。
巧からすれば理解不能な豪の怒り。
「わ‥け分かんねぇ!何がしたいんだよ、お前。聞いたら何もないって怒鳴られて、聞かなくても怒る。俺にどうしてほしいんだよ!!」
本気で頭にきたらしい巧は鋭い視線で責め立てる。
「巧にはどうせ俺の悩みなんか分からん!!こん、野球バカが!!!」
「はぁ!?お前には言われたくない!」
お前も野球バカだろ?意味を込めて語気を荒める。