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□明日俺が死んでも(山ツナ)
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傷付いても構わない。
奇跡を君がくれたから。
「ツナ!待っててくれたのか?」
マフィアごっこの後、秋の野球大会があった。結果はもちろん快勝。可愛い恋人が見てるとなれば負ける訳にはいかない。
野球はやっぱり何よりも楽しい。
俺は汗を拭い、空を見ながら以前の自分を思い返した。
心から毎日を楽しむなんて、前の俺じゃ考えられなかっただろう。
友達、先輩、親から与えられる期待や妬み、求められる偶像の自分。
圧迫感に耐え切れなくて。
「うん、みんなは先に帰ったんだけど…なんか待ってたくて。」
ごめんね?
ツナはそう言って待っていた事がまるで悪い事のように申し訳なさそうに笑った。
そんな顔、する必要ないのに。
俺はツナのおかげでかけがえのない毎日を手に入れたんだから。
ツナが側に居てくれるから。
俺は笑えるんだ。
「なんだよ、謝る必要ないだろ?じゃあちょっと待っててな。」
そう言って部活仲間に別れを告げるとツナと二人並んで歩き出す。
夕陽のあたたかさと少しだけ冷たくなった風が頬を撫でて心地良い。
歩き始めてから何故か続いている沈黙を破ろうと斜め下にあるツナの顔を見ると、ふと 目が合った。
「…ツナ?」
何か言いたげな空気を察して声を掛けると、ぎゅっと腕を掴まれた。黒曜中の奴に噛まれた傷が僅かに痛む。
「や、まもと…あのさ…もう、俺達の遊びに付き合わなくて良いから。」
可愛い顔を泣きそうに歪めて、だけど泣かないように声を絞り出してそんな事を言われた。ああ、この怪我…自分のせいだと思ってるのか?
違うのに、そうじゃないのに。
「ツ…」
「リボーンってば目茶苦茶だからさ。これからもっと危ない目に合うかもしれないし…今度は腕じゃ済まないかもしれない…」
「ツナ。」
「オレは野球を楽しそうにやってる山本が好きなんだ。だから、危ないマフィアごっこに…付き合わせたくなんてない。」
「ツナ!」
呼び掛けても話を止めようとはせず、ついには涙を流して無理に笑うツナをたまらなくなって抱き締めた。
ツナ、本当は分かってたんだ。
あの変な奴等が並盛を襲ってきた時には。
きっとコレは遊びなんかじゃない。