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□エンドロール(山ツナ獄/進行中)
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放課後、がやがやと教室が騒がしい中山本はツナの席まで歩み寄る。
友達になったあの日から、これが山本の日課だった。
「ツナー、今日遅くまで部活あるからさ…」
この先は言いたくなかった。先に帰ってくれと伝えれば、獄寺とツナは二人で帰る事になる。
いつからだろう、こんな些細な事さえも許せないようになったのは。
山本はつい言葉を止めた。
屋上から一緒に飛び降りたあの日に、多分自分は恋に落ちたのだ。
同性の、この小さな友人に。
決して実らない、けれど溢れそうになる想いを胸に秘め続けるのはとても困難で、最近はつい気持ちが口をついて出そうになる。
きっとそれは獄寺も同じで。
だからこそ出来るだけ二人きりにしたくなかった。
「今日オレも居残りだし終わったら待ってるから、一緒に帰ろうよ。」
そう言ってツナは優しく笑った。
ああ、やっぱり大好きだ。
こうやって二人で笑い合えるだけで胸の中があったかい。
ずっとこのままの関係で居たいと思う気持ちとツナを独り占め出来たらという欲望が心の中で入り交じる。
「ツナ…あのな」
「……?」
気付けば肩に手を乗せて小さな体を引き寄せて両腕に収めていた。もうこのまま衝動に身を任せてしまおうか。
獄寺には抜け駆けしてほしくないのに、自分は平気で同じ事をしている。心の中で自嘲しながらも動きを止める事はできなかった。
「あの、や、山本?」
「俺はツナの事が…」
口を開いて気持ちを伝えようとした瞬間、教室のドアが勢いよく開く音がした。
咄嗟の反応でツナは山本の体を押し返す。
「すいません、10代目!!今戻りました!」
獄寺が戻って来てほっとしたのか、ツナの表情が和らいだ。
「獄寺君!おっおかえり!」
「じゃあ、俺部活行くわ!ツナ、居残り頑張れよ。獄寺も、じゃあな…」
山本が教室を去り、ツナは自分の席についた。獄寺が続いて前の席に座り、椅子を反転させてツナの助けになろうと自分のノートを広げている。
そんな獄寺に申し訳なさそうにありがとう、と口にしながらツナは先程山本が言い掛けた言葉の続きを考えていた。
いくらスキンシップが人より激しいからと言って、同性の友達を抱き締めるなんて少しおかしい気がする。
様子もいつもと違ったし、もしかして…。
と、そこまで考えて思い直すように勢い良く首を振った。
突然の行動に獄寺は驚いてツナを見つめる。
自然と視線がぶつかった。
「10代目?どうしたんスか?もしかして具合が悪いんじゃ…!」
「いやっ、なんでもない!大丈夫だよ!」
獄寺が気を遣うようにツナの額に手を当てると思わず身を引いて手を避けた。
自然と熱くなる顔にツナは慌てて視線を落とす。
『そうだよ。俺が獄寺君を好きなのは特別なんだ。普通は男が男になんて恋しないよ。変な事考えてごめん、山本…。』
今頃グランドで爽やかにバットを振っているであろう山本に心の中で謝りながら、ツナはノートと教科書を開いた。