創造への奇跡book5

□側に描く放物線
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ウズマキフスベ。
今はもう絶滅してしまったという、"変化しないことを望んだ"植物。永らくの時を変化せずとも生きてきたその種は、星晶の急激な減少により息絶えることを余儀なくされたのだという。


「……この図体で、この凶暴性で。なぁんで植物を食べてたんだろうねぇ」
「そのおかげで、俺たちの任務も首の皮一枚繋がってるんだが。……確かに、謎だな」


目の前には3体の大型の魔物。ケイブレックスと呼ばれるソイツらは、とてもウズマキフスベを常食していたとは思えない凶悪な見た目で私達を威嚇していた。

ウズマキフスベそのものからドクメントを採取することは難しいけれど、生命は繋がってゆくものだから。このケイブレックスのドクメントからウズマキフスベの生きた証を得られるのではないかと、一縷の望みをかけてこのクエストが行われる事になった。

ジリジリと詰まる間合い。
今回のクエストは特に彼らを倒すことが目的ではなく、彼らから少しドクメントの情報を抜くだけだ。ウィル達お手製のギベオンチップと呼ばれる装置をケイブレックスに近づけ、数秒待てばいいだけ。言葉にすると至って簡単、シンプルだ。
しかし、目的のケイブレックスは3体で群れを成し、明らかにコチラに敵意を向けている状態。数秒とはいえとてもお近付きにはなれそうになくて。


「皆さんお揃いで、やる気は十分のようですね」
「戦闘は避けられないわ。構えて」


ロッドを構えいつでも術を放てる様子のティア。
それとは対象的にジェイはポケットに手を入れたままであるが、そこにいくつもの暗器が仕込まれていることを私は知っている。

(ケイブレックスは動きが素早いから、術を当てることは難しい。3体いるけど、どうやってサポート役のティアを守りながら前衛が攻め込むか、)

予想外の数の敵に、私は思考を巡らせていた。一対一の形を取れば、的も大きいしさほど難しい相手でもない。が、その間フリーになる2体を相手に、セネルとジェイだけでティアのフォローに入る形になる。それは、戦術として正解だろうか?
考え込んだのも一瞬。矢のように隣の空気が動く。


「俺とレツで1体ずつ引き受ける!俺たちのサポートは必要ないから、ジェイはティアを守りながら残りを叩いてくれるか」
「え!?待ってセネル、レツはともかく貴方一人で行くなんて無茶だわ!」


クルクルと頭を動かす私とは違い、セネル・クーリッジは迷わず駆けて行く。その指示にティアは不安を込めて叫ぶのだが、ジェイがティアを自分の背に押し込めながら制していた。
ケイブレックスを一人で相手する。それはなかなか骨の折れる作業で、常人であれば(私はディセンダーだしきっと常人ではない)一対一で向き合おうなどとは考えない。それを、自ら宣言した。

私はセネルのサポートに入るべきか。セネルに指定された1体の方へ標準を定めながらも、頭の中では急ぎ思考を巡らせる。しかし。


「格好つけるのはいいですけど。きっちり仕事はこなしてくださいよ、セネルさん」


特に心配している様子もない、彼と同郷だというジェイ。そして、セネルの周囲に激流を思わせる青い闘気が渦巻いているのを確認したものだから。

きっと、任せても大丈夫なはず。


「……わかった!セネル、そっちは頼んだからね!」
「ああ、任せてくれ!」


彼と私は背を向け合い、別々の敵へと狙いを定め駆け出した。



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