創造への軌跡book4
□大地の嘆き
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「おい、ちょっとツラ貸せ」
慣れ親しんだ慣習から、自動で開くことのないドア。乱暴にソレを開け放ち、オレの前に仁王立ちしやがったソイツは、珍しく完全にブチ切れた顔をしていて。
左手に握りしめた額当てがギチリと嫌な音を立てる。ご丁寧に用意された2本の木刀を投げ渡されれば、これから何をする予定なのかくらい容易に想像がついた。
ザリ、
砂利道に硬質なブーツが音を立てる。
会話もなく、ただ静かな足音だけが二人分。ザ、ジャ、と控えめに主張してくる。
ルバーブ連山。
レツが初めてルミナシアに降り立った場所。
件の開けたスペースに足を向けているとわかったのは、コイツの言いたいことをなんとなく予想していたからだ。
「………で?目当ての場所についたンじゃねェ?レツの兄貴のティトレイさんよォ」
その言葉にピクリと眉根が上がる。
その表情は苛立ちを欠片も隠そうとしておらず、不快感を顕にしていて。
「ンだよ、アイツから何か聞いたか?相談でもされたかよ」
ゴキ、と首を鳴らす。
それは、これからされるであろう行為の前の準備運動。
どうせ相談などしていないことはわかっている。アイツはずっとセネルとべったりだったのを知っているから。アイツがオレを見る瞳が、あの日からずっと変わっていないのを感じているから。
そしてコイツは、それに気付いているからこそ。
「御託はいい。構えろ」
訓練用のグローブとボウガンをセットし、真っ直ぐにオレを見つめ。
辺りが暴風に包まれた。
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