創造への軌跡book4

□未来、希望、その姿
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「あ、おはようレツ!やっとみつけた!」


パタパタとカノンノが駆け寄ってくる。

ヒトとなって戻ってきたGの歓迎会と称したパジャマパーティが終わった展望台は、またいつものような静けさを取り戻していて。私は部屋に帰ることもせず、特に何をするでもなく、ただぼんやりと空を見つめていた。

頭の中は相変わらずグルグルとしているのだけれど、それは以前自分の存在に悩んでいた時のように、吐き気を伴いそうな不快なものではない。


(…俺はディセンダーではなく、レツと話をしている。レツがどう思っているのか。知りたいのはそれだけだ)


自分では答えが出ていたつもりだったのに、他の答えがあるのではないかと、私の考えは間違っているのではないかと、そう優しく伝えられたような。自分でも表現できないのだが、ただ間違いなく温かだった否定が私の胸をかき回す。

(私はディセンダーで、このルミナシアを守るために生まれた存在で。でも、セネルは私を、レツを見てくれて、レツの幸せを願ってくれて、)

私は、どうすればいいのだろうか。

ディセンダーは、ヒトではないのに。

世界樹を、父を助けたいと思うのに。

ディセンダーではなく、私。
私は、私の想いは。

…セネルの優しい言葉をそのまま受け入れてしまうのは、自分の生に対する逃げだろうか?


「…レツ?何か悩みごと?」


ぬ、と覗き込むようにしてカノンノが目線を合わせてきて、ようやく私は我に帰る。そうだ、今はカノンノが私を探してくれていたのだった。ついさっきの出来事だったというのに、どうしてだか全く頭から抜け落ちてしまっていた。


今はセネルのことは考えないで。


セネルのことよりも、カノンノのことを、






《だったら、レツのことを好きな俺はどうしたらいい?》






セネルが。

私を。



セネルが、

私、を?



「おーーーい、考え事だか何だか知らねえけどよ。急がねぇとお客さん帰っちまうぜ?」


ピコン、とおでこに衝撃。

呆れたような顔を隠しもしないティトレイにデコピンをされ、私は今度こそ本当に我に帰った。


「へあ、ティトレ、」

「暁の従者の2人。ウズマキフスベが生えてたとかいう切り株を持って来てくれたんだとよ。そんで、これからはディセンダーの能力を転写するために協力してくれるって、張り切ってるぜ」


だいじょーぶかぁ?なんて笑いながら頭をワシワシぐしゃぐしゃグラグラとかき混ぜられ、なんとかかんとか意識を浮上させることができた私。そして今しがた伝えられた情報を3拍も4拍も遅れたタイミングで咀嚼した。

暁の従者。
ウズマキフスベ。
能力の転写。


「………そうだ!暁の従者!!二人とも無事だったんだね!!」

「おっ、ようやくお目覚めだな」


スパーダにディセンダーの能力がきちんと継承されているのかどうか、確認するために出かけたクエスト。そこで偶然にも侵食を受け倒れている人…暁の従者の人達を見つけた私達は、このバンエルティア号に連れ帰り治療をしていたのだった。
スパーダの能力にも特に問題はなかったのだろう。彼らとは以前にいろいろとあったとはいえ、何事もなかったようで何よりだ。


「なんかよくわかんねぇが、手がかりを持ってきてくれたんだってよ。そんで、今度はディセンダーの能力をルミナシア全体に広げるのに協力してくれるらしいぜ」

「私の力をルミナシア全体に…?」


以前、天才ハロルド先生が何かしらを閃いていたことを思い出す。もしやそれが、ディセンダーの能力を広げるという発想だったのだろうか。
今はスパーダにドクメントを転写する形で受け継がれているディセンダーの能力。あれはかなりの大掛かりな実験となったが、もっと簡易な方法で、負担も少なくこの力を広げることができるのだろうか。

興味は尽きないが、まず。


「暁の従者の人達、まだ帰ってないかな!?」

「今から行きゃ間に合うんじゃねぇか?街方面に舵切ってたから、到着までもうちょいあるだろ」


彼らに、話したいことがあった。
暁の従者という単語を聞くと、あの鬱々とした日々を思い出してしまい正直苦手なのだが。彼らが自分の足で動き出しているのだから、私も変わらなくてはならない。




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