創造への軌跡book4
□悲しみ
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「え〜〜?なんでティンティンじゃだめなのさ〜〜」
「いいわけねぇだろ!!」
どたばた。
布団の上には似つかわしくない物音で、パジャマ姿のティトレイとノーマが駆け回る。
パジャマパーティをするのなら、みんなの布団をくっつけてしまえばいい。通りすがりのしいなのアドバイスにより、展望室の地べたに各々の布団が直接敷かれて今や駆け回れるほどの面積になっていた。
ノーマの掛け声と共に集まった、私、セネル、キール、ティトレイ、そして主役のG。6人分の布団に加え、「皆さまが快適に過ごせるように」とロックスが予備の布団を4人分敷いてくれたものだから、これだけの大人数でも思いの外広々とした空間をそれぞれが確保できている。
「世界樹は…さすがに顔とかはないんだけどね?それでもなんだか、すごく人間くさい存在だったよ。優しくて、温かくて。だからレディアント達も慕っていた」
「世界樹に会えたのか!?…にわかには信じがたい話だが、君が言うんだ。間違いないんだろう」
「キール、いいの?元コクヨウ玉虫のヒト型生命体ほど胡散臭いモノはないと思うけど?」
「それを笑いながら言う辺り、末恐ろしさを感じるくらいだ」
「ふふ、ありがと」
Gとキールはどれだけ話しても話し足りないのか、さっきからずーっと2人で話しきりだった。是非Gと話したいと展望室へやってくる仲間達は何人もいたのだが、彼と一言二言会話をするのがやっとであり、何をそんなに話すことがあるのか2人は再び話し始めてしまうのだった。
(まあ面と向かって議論できるようになったんだから、嬉しいのは当たり前か。…それか、よっぽど寂しかったのかな)
彼らを見ていると、種族を超えた友情というものはやはり間違いなく存在するものなんだと改めて感じる。
温かい空間。
しかし、案の定ともいうべきか彼はいない。
「…シャーリィの側に居てあげなくてもいいの?」
私の隣でただ無言で寝そべっていたセネルに声をかける。睡眠時間が人より多いであろう彼は少しだけ眠たそうにしていたけれど、それを隠すようにしっかりと目を合わせてくれる。
「今日くらいは大丈夫だろう。今日はレツの側に居てやりたいって言っておいた」
「え、」
何のことはない、当たり前の事のようにサラッと言ってのける。
私は一瞬その意味が理解できなくて目を瞬かせたが、セネルの無表情の中に心配の色が微かに見えたためようやく合点がいった。
「朝からずっと顔色が悪かった。それに…」
彼にしては珍しく言い淀む。控えめに周囲を見回し、誰かの存在を探しているようにも見える。
きっと、スパーダがこの場にいない事を言外に伝えたいのだろう。
彼は今朝からずっと私の側にいたのだから、同室のスパーダが昨晩帰ってきていないことも、私の血の気の引いた表情も全て知っていて、それでも何も聞かずにいてくれた。
気を遣って言葉を選んでくれているものの、その眼はまっすぐに私を捉えていて。洗いざらい懺悔したいような気持ちにさせられる。
「…話したかったら、話してくれ。レツには笑っていてほしいからな。そんな顔でいられると、どうしていいかわからなくなる」
困ったように眉を下げられてしまえば、もう降参だった。
「聞いても面白い話ではないんだけど、それでもいいなら」
私たちはゆっくりと体を起こし、主役のGに一声かけてから甲板へと向かった。
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