創造への軌跡book
□ブレスで一発!
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最初こそ眺めに大興奮していたノーマだけど、ある程度堪能したら落ち着いた様子になった。たぶん、何か大事な話がしたいんだろう。ムードメイカーっぽい彼女だけれど、どうやら冷静な面も持っているらしい。
「レツまるとセネセネって、どっちが先にココに入ったの?」
「セネルだよ。私の少し前に入ったって言ってたかな……でも、正確にどのくらい前かはわかんない」
机を挟んで真向かいに座る私たち。ノーマは身を乗り出すようにして話すものだから、ちょっと驚いた。でもそのくらい真剣なのかな、とも感じる。
「ん〜。じゃ、レツまるから見てセネセネって、どんな感じ?」
「セネルはシャーリィにとても優しくて、穏やかで、いいお兄さんだと思う。私にも優しくしてくれて尊敬してるかな。ただ、坊っちゃま……スパーダとは仲悪くて、それが不思議なんだけどね」
ふぅん、と呟くノーマ。……いったい何が聞きたいんだろう。とりあえず聞かれた事に素直に答えたけれど、まったく意図が掴めなかった。
ジッと、ノーマの次の出方を伺っていると。その視線に気付いたノーマがハッとし、照れ臭そうに笑った。
「……あはは、ゴメンね?意味わかんないよね〜」
「ううん、何か大事な話だっていうのはわかるよ」
笑顔で返せば、ぽりぽりと頬をかくノーマ。真面目はあたしの趣味じゃないんだけど、と呟く。
「いやさ、セネセネが想像以上に元気そうだったからさ〜。何でかな〜と思ったけど、やっぱわかんないや。ま、元気に越したことはないケドね」
一応気にかけてんだよね〜と笑うノーマだけど、本当はすごくセネルを心配していた事がわかる口ぶりだ。……でも、なんで心配してるんだろう。
私の不思議そうな視線に気付いたようで、ノーマはまた笑って言う。
「ま、セネセネは言わないか。そうホイホイ言える事じゃないしね〜」
ノーマは笑っている。でも、少し寂しそうな笑顔。……それを見て、なんとなくだけど…わかった。セネルは敗戦国の出身で、ノーマも同郷。久々に会ったセネルの事を心配していて、元気そうで安心してるみたいだから。
誰か、亡くしたのだろう。
「たぶんセネセネから言ってくれると思うから、あたしは言わないかな〜。怒られるのヤだしね」
この話は終わり。そんな風に伸びをしながら立ち上がるノーマに、少しだけ笑顔になる。仲間想いのムードメイカー。そんな彼女の人柄が、見て取れたような気がしたから。
「セネルなら大丈夫だよ。元気にケンカもしてるし、寝坊もしてるから」
「さっすがセネセネ、それなら安心だ!!」
2人して笑って、何事もなかったかのようにして部屋に帰る。途中でセネルに出会ったけど、ノーマも私も笑っただけだった。2人でセネルの背中を叩き、理由も言わず通り過ぎる。目を白黒させるセネルが面白い。
「今のままでいいんでしょ、ノーマ?」
「そ〜んな真面目に考えなくてい〜よレツまる!!じゃ、ジェージェーん所行ってくるわ」
明るい明るいムードメイカー、ノーマ。彼女は誰より仲間想いのトレジャーハンターでした。
ブレスで一発!
(セネルの事も気になるけれど、今は聞くべきじゃない)
(そんな気がした)