創造への軌跡book
□失礼ですよ
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二日、三日程前から故郷の復興に関わるクエストでバンエルティア号を離れていた彼、セネル・クーリッジ。温かな雰囲気を持った彼……だと私は思っているのだけど、坊っちゃまの前だとそうではないようで。
「レツ!!こんな奴と同室だなんて……。大丈夫だったか!?おかしな事はされていないか!?」
「うん、大丈夫だよ。セネル落ち着いて、」
「"こんな奴"たァご挨拶じゃねェか。ケンカなら買うぜェ?」
なんでだか、セネルと坊っちゃまはとても仲が悪いのだ。目が合えば睨み合い、口を開けば言い争う。それでもケンカにならないのは、教会関係者の姉さんによるプレッシャーのおかげだったりする。
「お前みたいな奴とレツが何故相部屋なんだ。お貴族サマのくせに品位のカケラもないお前と」
「アンジュが決めたンだよ。文句あンなら直接言いに行けよこの石頭」
バチバチと飛び散る火花。あー、懐かしい。と言っても、離れていたのはたったの三日だけど。
紅茶につけられていたレモンを齧りながら、白兎のぬいぐるみを抱きしめる。それに気付いたセネルがケンカを止め、こちらをジッと見て来た。
「それは……?」
「ああ、オサム君のこと?オサム君はね、」
私がオサム君について説明しようとしていた、そのまさにバッドタイミング。またまた開いた甲板の入り口から、紫色の小さな子が現れた。
「セネルさん、お取り込み中失礼しますね。この船のリーダーは何処にいますか?」
「ジェイ!!どうしたんだ?こんな突然」
小さな子はセネルの知り合いだったらしい。2人が話し込んでいる間、私はようやく学んだ行動をとる。
「……ねぇG。あの子、女の子?」
『違うと思うよ』
「……聞こえているんですが。失礼だとは思わないんですか、レツさん?」
また間違えた、彼は男の子だったようだ。シュンとうなだれながらも、一つ疑問。
「私、名前教えたっけ?えーと、ジェイ、だったかの少年?」
私、彼とはおそらく初対面だと思うのだけど。そう尋ねれば、彼は満足気に笑う。アドリビトムは有名ですからね、当たり前です。そう自慢気に教えられた。
「少し用事があるんで、失礼しますよ。……あ、あとセネルさん。これ、ノーマさんからの手紙です」
手紙を手渡し、スタスタと歩いて行くジェイ。それを見送る事もせず手紙を開いていたセネル。すると、途端に嫌そうな顔になった。
「ブラウニー坑道……何がしたいんだ、あいつは」
「依頼?なら私も手伝うよ」
ブラウニー坑道での人探し。突然のクエストに、私、セネル、坊っちゃま、Gで行く事になった。
失礼ですよ
(あの後、ジェイはアドリビトムのメンバーになったらしい)