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□手助けは必要ないよ!
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あれからレツを見つけてバンエルティア号に帰ってきた僕らはアンジュに退治終了の報告をして、それからは特に用事がないからホールでだらだらと世間話みたいな感じの事をして暇を潰していた。途中でヒスイはどっかに行き、その後レツもどこかに行っちゃったけど彼女はすぐ戻ってきた。そしてまたしばらく雑談を続けていると。

「なぁ。そういえばよぉ、さっきの戦いでエストとヒスイの武器から出た光、あれなんだよ?」

とスパーダが問いかけてきた。光って……ソーマリンクの事だよね。レツもどうやらその光を見ていたみたいで興味津々に僕を見る。まぁ別に答えちゃいけない理由なんてないから、答えますか。

「あー、あれかい?あれはソーマリンクって言ってね、僕らの持つ特殊な武具ソーマを持つ者同士の心(スピリア)が繋がった時に出る光かな」
「すぴりあ…つながる?わけわかんねぇ」
「まぁ簡単に言ったら、信頼してる者同士がお互いを思う事で相手の考えや気持ちがわかるようになるのさ」

出来るだけわかりやすく答えたら、スパーダもレツも何となくわかったみたいでうんうんと頷いた。まぁソーマ自体があんまり知られていない武具だしね……わかんないのも仕方ないかな。そう思ってたらレツがにんまりと笑って聞いてきた。

「じゃあヒスイがいっつもエストの寝てるとこ当てるのもその走馬灯リングってやつのおかげなのね?」
「ソーマリンクね。……いや、それは違うかな。わざわざ僕を探すのにソーマリンクを使わなくたってすぐにわかるんだって。なんとなくどこにいるか感じるらしいよ」
「うっ、さりげなくのろけが来たっ!」
「大丈夫かっ、相棒!?」

まるで攻撃を受けたかのようにのけ反るレツを支えるスパーダ。相変わらず仲良しだなぁ。この二人はすごく息が合ってるしいつだって楽しそうだ。そんな事考えてたらレツがキラリと目を輝かせ、思い出したように僕に向かって叫んだ。

「そうだ、エスト!さっきヒスイがアーチェと腕組んで食堂でお菓子食べてたのよ」
「へー、珍しいね。ヒスイとアーチェが一緒にティータイムしてるなんて」
「そこに注目すんのかよっ!そこは嫉妬心出して、あの野郎許さねぇって制裁加えるとこだろーが!」
「くっ。せっかく嘘の情報を与えて二人の仲に亀裂を加え、それを乗り越える事で新しい関係を産み出そうとしたのに……っ!」
「さすがエスト……。リッドとファラの熟年夫婦とはまた違った安定感があるぜ……」

あ、なんだ、嘘だったのか。なんかレツはすごく悔しそうだし、スパーダはうちひしがれてるし……。いったいどうしたんだろ。小声でブツブツ何か言ってるし。とか思ってたらレツがガバッと顔をあげて僕に詰め寄ってきた。

「で、時にエスト君!!」
「なんだいレツ。改まって」
「あたしに悩みを教えなさい!ぶっちゃけるんだ!何でもいいから、恋愛関係なら!さぁ、白状するんだ!今なら罪にならないから!ほら!」
「わー、いきなりだねぇ」
「つーか、レツ。尋問になってんぞ」
「なんならカツ丼もつけるわよ!」
「いやー、お腹すいてないからいいや」

ぶっちゃけるとカツ丼好きじゃないし、肉嫌いだし、ご飯食べたくない。それにしても恋愛関係の悩みかぁ。ヒスイがシングとコハクの邪魔をして困るっていうのは駄目かな?まぁレツはきっと僕とヒスイの間での悩みを聞いてるんだろうなぁ。

「悩みかぁ……。うーん、まぁあるといえばあるけど……」
「なになに?この愛の戦士レツちゃんに任せなさーい!」
「いや、別にいいよ。レツの手をわずらわせるほどじゃないからさ」
「そんな事ない!あたしがいつだって手取り足取り支えてあげるから!エストならかっこいいし大歓迎よ!」
「それ浮気発言か、相棒?」
「そうやって何かしようとしてる時のレツはイキイキしてて可愛いよねー」
「くっ……まじで惚れるわ、エスト」

この悩み、言ってもいいんだけど……めんどうな事になりそうだしなぁ。レツはきっと愛の戦士として悩みを解決しようとしてくれるんだろうな……色々無茶な方法とか使って。たまにその犠牲者を見かけるしなぁー、主にキールとかね。

「てかお前ら。さっきから俺の存在スルーしてんだろ」
「そんなことないよ、相棒!これは相棒の存在を認識した上であえて見なかった事にしてるだけだから!」
「結局スルーしてんじゃねぇか!」
「気のせい気のせい。スパーダの単なる自意識過剰だから!」

僕が考えてる間に二人はじゃれあいを始めたし。これは……逃げた方がいいかな。そろりそろりと気配を消して僕はレツとスパーダから距離をとる。それからそっと扉を開いて、気づかれないように閉めた。

「はっ、しまった!今回の対象が逃げた!行くぜ、相棒!愛の戦士の出動。恋に悩む彼氏よりかっこいい少女を救うんだ!」
「へーへー、りょーかい」

そんな二人の声が聞こえてきたけどとりあえず無視!今は逃げるべきだ。そう決断して僕は急いでその場を後にした。


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