創造への軌跡book

□それは突然の出来事
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リカルドさんはもう大丈夫ですよ、と姉さんが言う。もう休憩していいのだ、と暗に意味しているのだけど、リカルドさんはあんな話をした後だからか姉さんの側から離れようとしなかった。

姉さんは改めてクエストカウンタの前に立ち、私とスパーダは少し緊張気味でその前に並ぶ。



「こほん。…今日は、2人に大切な話があります」

「は、はい」

「お、おう」



急に真面目な顔になる姉さん。それはまるで、今から説教をされるような空気で。なんだろう、私は何かしただろうか。


「まず、スパーダ君」


ピッとスパーダを指差す姉さん。その迫力に押されてか、不良の肩がピクリと跳ねた。



「昨日の夜。レイヴンさんとチェスター君と3人で、何をしていたのかしら?」



ぅげ。

目に見えてスパーダの表情が青くなる。そして私は、その“昨日の夜”の出来事を知っていて。



「怒らないから、正直に言いなさい?今なら神様も余所見をしていてくださるわ」



姉さんが“怒らないから”と言う時は本当に怒らないけれど、笑顔の沈黙が怖い。それは、長くバンエルティア号に乗っている私の知識。……だからといって言わないと怒られてしまうから、もうスパーダには白状する道しか残されていないのだけど。



「………女湯の、覗き見です」

「よろしい。…まあ、レツが見つけて止めてくれたから、正確には未遂かな?」



そう。なんとこの変態不良貴族は、昨日の夜バンエルティア号の女湯を覗こうとしていたのだ。私がお風呂に入ろうとしていたらコソコソと怪しい3人組がいて、ギリギリ覗き見が出来るか…って所でお縄にしてやった。

ダラダラと汗を流す変態不良貴族スパーダ氏。実に自業自得な事だから、可哀想とも何とも思わなかったけれど。



「チェスター君にはこれから一週間、アーチェがフルコースを振る舞ってくれることになりました。レイヴンさんには、ちょっと数が増えすぎたというブラッサムを狩りに、1人で出てもらいました」

『ぅわ…』



にこやかな笑顔で言う、アンジュ姉さん。仲間達の悲惨な末路を聞き、無意識でそこに正座になるスパーダ。

スパーダにはどんな罰が言い渡されるのか…?そう、私とリカルドさんが考えていると。



「レツ?」

「わ!!な、何でしょう姉さん」



突然話題が私に向けられ、すごく驚いた。あれ、スパーダの罰則の話をしてたんじゃ…?

そこまで考えて、ハッとする。

すごく他人事みたいに聞いていたけど、そういえば、私もスパーダと一緒に名前を呼ばれた気がする。一緒に名前を呼ばれたスパーダが、怒られて。そして今度は私の名前…?



「え、姉さん、……私、何か怒られるような事、した…?」



私の声に、姉さんはにこやかに笑うだけ。そして、何も言わなかった。

―――やった、のか。

無言はおそらく肯定。どうしよう、心当たりが無いなんて最低だ、私。気がつけば私は、不良の横で自主的に正座をしていた。



「…まぁ、レツの場合は一概に悪いとは言えないんだけど……。でも、気をつけては欲しい事かな?」

「気をつけて、欲しい事…?」



スパーダ君もレツも、顔を上げて?
優しい声が降り注ぎ、私たちは揃って顔を上げた。目の前には天使の笑顔を浮かべる姉さん。


そして、判決が下された。









「今日からスパーダ君は、レツの部屋に引っ越す事。そして必ず、2人一緒にクエストを受ける事。……いい?」









「「………へ?」」



ぽかん。

私たちは開いた口が塞がらず、それを見たリカルドさんとGが笑った。





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