創造への軌跡book
□隠された里
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「はぁーん…エミルぅ…」
「マルタ?どしたの急に」
坑道の中は、里に近付くにつれてトラップが増えていった。通路を塞ぐ壁があったかと思えば、床には所狭しと針が備え付けられていて。それを避けながら進む……だけならまだしも、戦闘まで行わなければならないのは辛い。
あまり走り回りたくないから攻撃はハロルドとマルタの術に任せ、私とクラトスは2人を守ることに徹していた。ついでに今回のクエストには、Gは不参加だったりする。よくわからないけれど、何だかキールがGに用事があるらしい。
そんなこんなで気の抜けない今回の任務。みんな敵がいなくなったことで息をついていた中、突然マルタが呟いた。
「えへへ、今レツが私を守ってくれたじゃない?前にエミルにもこんな風に守って貰ったなぁって思ったら、懐かしくなっちゃって」
「惚れ直した?」
「うん!!レツったらわかってるじゃない!!」
嬉しそうな笑顔。マルタはいつだってエミルの事が大好きで。それを見ているだけで、何だかコッチも嬉しくなる。
……そういえば、エミル。
「じゃあさマルタ、いいこと教えてあげるよ。前にマルタがジョアンさんの護衛に行ってた時があったでしょ?」
「うん、それがどうかした?」
「その時エミルね、マルタの事すっごく心配してたんだよ?」
「本当に!?」
「うん、心ここに在らずみたいな感じだった」
私の言葉にキラキラと目を輝かせるマルタ。それを見て私は、恋する女の子って可愛いなぁ…なんて思う。この2人は両想いで、しかも安定した雰囲気があるから。……だからルカなんかは特に、憧れてるみたいだし。
マルタの目が乙女モードに変わる。あ、いつものノロケ話がくるかな?そう思ったのだけど。
「わー!!待てっ!こらーーーーっ!!」
音のこもる坑道に、突然響き渡った声。
「なぁに、今の声?」
「さぁ…女性だったみたいだけど」
何故か宗教団体のチラシを持っているハロルドが、それをポイと捨てながら言う。首を傾げる私達3人だけど、1人だけ、心当たりがあるようだった。
「あの声は…!」
「クラトス、知り合い?」
「確信はないが、可能性はある。……何か異様な気配が流れてくる。先を急ぐぞ」
曖昧な返事をし先を歩くクラトスに、とりあえず私達はついて行った。
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