創造への軌跡book

□貴方の希望は
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「はぁ…はぁ…はぁ…」

「やっぱ、こんだけアチぃと、キツいな…」




額に滲む汗を拭う。とめどなく流れるものだから意味はないんだけど、まぁ気休めだ。

ミミズを倒した私たちは、少し休憩中。さすがに体力を消耗したから辛いけれど、まだまだ依頼は終わっていなくて。序盤からハードな仕事だなぁと思う。

地面に座り込んでいた私に、スパーダが手を差し伸べてくれる。私はその手をとり、ゆっくりと立ち上がった。それを見たクレスがにっこり笑う。




「それにしても、レツとスパーダは凄く息があっていたな。本当に、一緒に戦うのは初めてなのかい?」




スパーダと私は顔を見合わせる。確かに、初めてとは思えないくらい戦い易かった。双剣士は攻撃範囲が広くて読みにくいかなぁと思ってたけど、全然そんなことなくて。逆に、動いて欲しい所に来てくれるというか?




「あー。ま、イリアも言ってたけどよ、確かに強ぇみてぇだな」

「どうも。“お坊ちゃま”も華麗な動きだったね」




私が何とはなしに、サラリと言うと。“お坊ちゃま”という単語を聞いた途端、スパーダは目を見開いた。そして、ギギギ、という効果音でも出そうなくらいぎこちなく、イリアの方を振り返る。その先で、イリアは必死に首を横に振っていた。……顔は、にやけていたけれど。




「ち、違うわよ!?あたしじゃないってば!………ブフッ」

「テメ、笑ってんじゃねぇか!ごまかしてんじゃねぇぞ…!?」

「あー、イリアじゃなくて、アンジュ姉さんね。そんなに怒らないでよ“お坊ちゃま”?」

「アンジュ……ッ!!つか、お前も連呼すんな!」




私たちがギャイギャイと騒いでいると、さすがにクレスが止めに入った。そして苦笑いしながらも、先に行こうと促して。呼吸もすっかり整った所で、またオアシスを目指すことになった。


意外と気の合う仲間(戦闘でもそれ以外でも?)が分かったから、ポジションが決定した。私とスパーダが先頭を行き、ほとんどの魔物は片付ける。そして、少し重たいケージを引き、守るのはクレス。万一背後に敵が来た場合には、イリアの拳銃で牽制する、という具合だ。

成り行きで決定したパーティの割には、なかなか上手いと思う。……いや、もしかしたら、姉さんは見抜いてたのかな?急に希望した私とスパーダに、快く了解を出してくれたし。もしそうなら、やっぱり姉さんはスゴいと思った。









「…ついた、かな?」




今まで砂漠だらけだった中、突然植物が現れた。そしてその奥を見ると、透き通った水。たぶん、ココが目的地で間違いないだろう。

イリアが今にも飛び込まんとするくらいの勢いで駆け寄り、水を飲む。その横ではクレスが、ケージをゆっくりと置いていた。


オアシスにケージを置き、鍵を開けたら退散する。そうすれば、魔物も勝手に出て行くだろう…。相変わらず不思議な依頼だけど、きちんとこなさなきゃ。みんな一通り、水を飲んだり水筒に補給した所で、鍵を開けることになった。

クレスがケージに近付こうとした、その瞬間。




ドガッ!



「ぅぎゃ!?何コイツ!?」

「サンドファングだ…」




ケージの上に飛び乗ったのは、トカゲのような魔物―――サンドファングだった。何にそんなに興味を持ったのか、ケージを壊そうと攻撃している。大型の魔物に乗られ、攻撃されるケージは、今にも壊れそうだった。

ココでケージを壊されては、依頼を完遂した事にはならない。そう思って戦闘体制に入ると。




『ぅわああぁ!?何が、何が起こっているんだ!?』

『誰か、助けてくれえぇ!!』

「え…?」




私たちの声じゃない、別の“人”の声。そしてソレは、私たちが“魔物”を運んでいた筈だった、ケージの中から聞こえてきた。

私たちは顔を見合わせる。何が起きているのか、自分たちは何を運んでいたのか。嫌な予想しか出来なくて、血の気が引いていくようだった。みんなが唖然とする中、クレスが剣を構える。




「…あの魔物を倒して、ケージを開けよう。僕たちは、“人”を捨てる依頼なんて受けていない」

「賛成。まずはコッチに注意向けて、ケージから引き離すよ。剣や銃じゃ、ケージが危ないからね」




全員が頷いた所で、走り出す。そして少し離れた所から、鷹爪脚で飛び込んだ。ケージへの負担を抑えるため、威力の低い攻撃。それが災いして、私がバク宙で距離を取る際、サンドファングは追撃してきた。反転した視界で、鋭い牙が光る。確かアレをまともにくらうと、石化するんだったか。




「エアスラスト!」




危ない、という所でスパーダの術が発動する。相変わらずの絶妙なタイミングに、信じていたけれどホッとした。

どうやらサンドファングは風属性の技が苦手な様で、地面に落ちてからもしばらく悶えていた。その隙にイリアが銃弾を叩き込み、クレスがトドメをさす。動かなくなったサンドファングを見て、私たちは構えを解いた。




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