創造への軌跡book
□君達、大丈夫かい?
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2人を見送り、改めてクエスト達成を報告しに行く。あまりにも2人が微笑ましかったものだから、顔のにやけが収まらなくて、姉さんに笑われてしまった。仲良くなれた…かどうかは怪しいけれど、キールと沢山話せてよかったなと思う。
そうして、一息つこうかとしていた時。
「ぅぎゃああぁぁぁぁあああぁぁぁッ!!」
悲鳴が聞こえた。これは、イリアの声?
「…イリアの悲鳴ね。研究室辺りから聞こえた気がするけれど…?」
「私、見てくる!」
驚いたように言う姉さんを置いて、私は走った。
研究室はすぐ近くだから、真っ直ぐ走って飛び込もうとする。横開きのドアを開け、入ろうとすると………私がドアの前に立つより先に、ドアが開いた。
「ぅ、わ!?」
勢いをつけていた所だったから、すごく驚いた。急なブレーキに尻餅をつかないように耐え、前を見ると。目の前にいるのは“研究室”には似合わない2人。
「スパーダと…イリア?あれ、イリアの悲鳴だと思ったのに……?間違えた?」
イリアの声がしたんだから、イリアがいて当たり前なんだけど……こんなにも普通にいるとは思わなかった。それに2人は妙な笑顔を貼り付けていて、不自然に横に並んでいる。
よく状況がわからなくて、私は目をパチパチさせた。そして、研究室の中で何かあったのかな、と思い覗き込もうとすると。
「「あーーーーーーッ!!」」
「うわッ!?…へ!?え?」
突然、2人が叫びだした。手をバタバタさせて、心なしか汗をかきながら。
な…なんだなんだ。本当に状況が掴めない。
「…と、突然どうしたの。研究室の中に、イリアの悲鳴の原因があるんじゃないの…?」
「え?悲鳴?………っあー、と」
イリアの視線が泳ぐ。明らかに心当たりがあるっぽくて、やっぱりあの悲鳴はイリアのだと確信した。
でも、何故だか私に言うのを戸惑っているみたいだ。何度か口をパクパクさせていて、言いにくいなら直接見ようと首を伸ばす。しかし、スパーダが上手いこと邪魔になって、研究室はサッパリ見えなかった。
それにムッとして、スパーダを睨んでいると。ようやくイリアが口を開く。
「…あー、悲鳴ね悲鳴!アレね!……ちょっとスパーダが、全裸で腹踊りしたモンだからさ!」
「え、」
「はぁ!?おいてめ、イリア!!」
笑顔で言うイリアに、スパーダが怒る。私がスパーダを軽蔑の眼差しで見つめていると、その視線に気づいたのか、慌てて否定した。
「違ぇだろうが!…あ、アレだよ!アレ!…イリアの目に、爆弾級のゴミが入ったんだよな!」
「はぁ!?アンタ、何言ってんのよ!!」
爆弾級のゴミ……。一応確認するけど、イリアの目はいつも通りで、まったく充血していない。ゴミが入ったようになんて、見えなかった。
……明らかにウソついてるよなぁ、この2人。
私の呆れた顔に、2人は顔を見合わせる。そして、揃って笑顔になって言った。
「あ、あのねレツ!私、アンジュにクエスト頼まれてるのよ!クレスと行くんだけど、アンタもついて来なさい!ね!」
「め、名案じゃねぇか!後、オレもついて行くからよ!お前の実力、見せてくれよ!」
「そ、それがいいでございますわよ、スパーダさん!レツさんの実力は素晴らしいんですのよ?」
「そ、それはいいねイリア君!さぁ行こう、すぐ行こう!」
「………えーっと。」
あはは、うふふと笑いながら、2人は私をズルズル引っ張っていく。なんだろう、このテンション。明らかにおかしいけど、突っ込まないでおいた。
多分、何か隠し事があるんだろうなと思う。気にはなったけど、2人が言いたくないならそれでいいや。イリアの身に何かあった訳でもなさそうだし。きっと、後から教えてくれるだろうと信じてる。
とりあえずは、急遽行うことになったクエストに集中しようと思った。
君達、大丈夫かい?
(あーらクレスさん!待たせましたわね!)
(…え?どうしたんだい?)