創造への軌跡book
□君達、大丈夫かい?
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アップルを5個。比較的簡単な仕事だったけど、無事に採取することができた。
ゴロゴロしていてかさばるアップルを、しっかりバックに詰めて。意気揚々と船に帰って来た。ホールに繋がるドアが開くと、目の前には紺色の髪。
「あ、キール。ただいまー」
「…お前か」
ドアのすぐ前にいたのはキールだった。相変わらず私を見た途端に不機嫌になるけれど、もう慣れた。別に会話が出来ない訳じゃないし、気長に仲良くなろうと思うから。
キールは簡単な荷物を抱えていて、今からクエストに出るのかもしれないと思った。でも、それにしては周りに人がいない。
「キール、一人?クエストなら手伝うけど」
「いや、メルディもいるんだが…」
そこまで言って、何とも複雑そうな顔をした。私は不思議に思ってキールを見ていると、少し視線をズラす。そしてしばらく悩んだ末、口を重たそうに開いた。
「…その、手洗いに行っている。出かける直前に騒ぎ出して………。まったく、アイツには品がないんだ」
小さな声で、ブツブツと。そんなキールを気にも止めず、私は堂々と口に出した。
「手洗い?…あぁ、トイレね。ダッシュで駆け込んだのか」
「お前ッ、せっかくボクがぼかしたのに……!お前といいメルディといい、下品すぎる!」
顔を赤らめ、キールはプリプリと怒る。何が気に入らなかったんだろう…?トイレ?お手洗いって言うべきだったのか。でも、字数的に絶対トイレの方がいいと思うけどなぁ…。
キールはそっぽを向いてしまい、ぐちぐち文句を言っている。あ、また怒らせた。というか、キールの沸点がいまいちわからない。
「キールが細かいんだって。生理現象くらい目を瞑ってよ?」
「そういう問題じゃないだろう!」
「ないのか?」
「当たり前だ!…って、」
可愛らしい声。
当然私の声じゃなくて、声がした方向はキールの後ろ。気がつけば、メルディがキールにくっついていた。キールがひっくり返った声で名前を呼ぶと、メルディが「待たせてごめんな!」と元気よく応える。
それを私は、可愛いなーと見つめていたんだけど。キールはメルディから顔を背け、何やら架空を見上げている。何かあるのかな、と思ってソコを見ても、何もなくて。またキールに顔を向けると、びっくりするくらい真っ赤なキールがいた。
「え、キール…?どしたの、って、もしかして?」
「な、なんだ!」
今にも沸騰しそうなくらい真っ赤。そしてメルディは、満面の笑み。それを見た私がたどり着いた答えは、一つしかなくて。みるみるうちに顔がにやけていくのがわかった。あぁ、こういうのは大好きだよ。
「…へー、前々から気にはなってたんだけど、やっぱそうかぁ。そうだよね、いつも一緒だもんね色男!」
ばしん、と右肩辺りを叩く。するとキールはフラリとし、私を睨んだ。…でも、そんな真っ赤な顔じゃ怖くなんかなくて。むしろ、もっと弄ってやりたくなる衝動にかられる。
「お前ッ…。か、勘違いするな!ボクとメルディは、別に…ッ!」
「あはは、キール。ソレ素晴らしい墓穴だよ。……あ、ゴメンねメルディ。今から王子様とデートなのに、引き留めちゃって」
「大丈夫よー。メルディがトイレに行ったのが悪かったな!」
「デー…ッ!?」
私とメルディがニコニコしている横で、キールは今にも倒れそうだった。
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