創造への軌跡book

□やさしい兄貴
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ホールへ行くと、アンジュ姉さんとウィル、ルビアがいた。姉さんが真っ先に私に気付き、にっこりと笑顔を向けてくれる。その笑顔は私を手招きするように感じられたから、少し早足でみんなの元へと向かった。

ウィルの手元には地図があり、オルタータ火山に印がつけられていて。たぶん今からこの2人は、調査に行くんだろう。




「ちょうどよかったわ、レツ。キール君たちから話は聞いた?」

「うん。私も調査、ついて行くよ」

「これから頼もうと思ってた所だったから、助かるな」




口元に手を当て、上品に微笑む。後ろに束ねた髪がふわりと揺れて、とても綺麗だった。

そんな姉さんにつられて微笑みながら、ウィルとルビアの方へ向き直る。すると2人も微笑んで、よろしく、と挨拶してくれた。


よし、今日も頑張ろう!と気合いを入れた時。

甲板へと続く扉が開かれた。




「へぇ…ここがアドリビトムか。予想以上にデカいんだな」

「そうかもしれないね。…あ、アンジュ!今ちょっといいかな?」




現れたのは、クレスにミント。そして、クレスと仲が良さそうに見える青年だった。彼は長い青白色の髪を後ろに1つにまとめ、背中に矢筒を背負っている。

3人はアンジュ姉さんの方へと歩み寄る。とりあえず私たち3人は、邪魔にならないよう少し移動した。

クレスが青年に、姉さんがアドリビトムのリーダーであることを伝えて。すると青年は、1つ咳払いをし、自己紹介をした。




「俺はクレスの友人で、チェスター・バークライトです。あー……っと、このギルドで、働かせて貰いたいんだが…」

「彼は弓の名手なんだ。きっと、僕らの力になってくれると思う」




緊張しながら話すチェスターに、満面の笑みを向けるクレス。そんな2人に、初めは驚いていた姉さんだったけど、簡単にOKを出した。そしてチェスターの方を見、私たちの方を見て、にっこり笑う。




「チェスター君、お昼は済ませたのかしら?」

「え?あ、はい。街で食ってきました」




笑顔で問いかける姉さんに、チェスターは不思議そうに答える。すると、姉さんは私たちを呼んで言った。




「じゃあ、これから4人には、オルタータ火山に行って貰います。気をつけてね?」

「4人…って、俺か!?」

「そうよ。調査内容は3人が知っているから、3人に聞いてね」




いってらっしゃい、と手をヒラヒラふる姉さんに、チェスターはポカンとする。こうなった姉さんには逆らえないよ、と私が伝えると、チェスターは複雑そうな顔をしながらも腹をくくったようだった。


とりあえず簡単に自己紹介を済ませ、火山へと向かう。“赤い煙”は本当に存在するのか。そして、それはいったいどんなモノなのか。

不安定な熱気に包まれながら、私たちは奥を目指した。









やさしい兄貴





(なんか、すげぇリーダーだな…)

(姉さんは自慢のリーダーだからね!)
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