創造への軌跡book
□ブレスで一発!
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「だいたいお前、意味わかんねェンだよ!!人によってコロコロ態度変えやがって!!」
「安心しろ、そんなのはお前相手だけだ」
「ンだと!?」
「『…………』」
ドカーン バキィ……
そんな戦闘臭溢れる音が鳴り響く中聞こえてくるのは、器用にも戦いながらケンカを続ける2人の声。いい加減それにも慣れてきて、私とGは普通に戦闘に集中していた。
セネルの友達が待っているというブラウニー坑道。ここに入ってからかなり進んだ気がするのだけれど……未だそれらしき人は見当たらない。そしてまた、未だケンカが鳴り止んだ時もない。
「なんで仲悪いかなぁ…」
『スパーダがというより、セネルがスパーダを嫌いなんじゃないかな。スパーダって意外と協調性あるタイプだし』
「でも、セネルだって一方的に人を嫌ったりはしないと思うけど…?」
2人で理由を探してみてもイマイチわからない。Gは最初は心当たりがあったらしいけど、それが原因にしては根が深すぎるという。……まぁ、私には心当たりすらないんだけど。
とにかくお世辞にもいい空気とは言えない雰囲気で奥へと進む私たち。すると突然、後ろから声をかけられた。
「ねぇねぇ君たち、今ヒマ?ヒマだよね?んでもってギルドの人だよね〜?私の依頼受けてみない?100ガルドぽっきりでいいよ!!」
元気よくかけられる声に振り向くと……そこには黄色い服を着た女の子。ボンボンのゴムが可愛く揺れて、手には何だかよくわからない筒を持っている。
セネルと坊っちゃまが先頭を歩いていたから、必然的に私とGが近くにいるわけで。女の子は私に声をかけながら、視線はジッと肩の上のGに向けられたままだ。
「おお〜、肩に虫乗ってるよ?取ったげようか?それにしても立派なコクヨウ玉虫だね〜」
「え?コクヨウ玉虫を知ってるの?」
「もっちろん!!……って、ウィルっちが熱く語ってたからなんだけどね〜」
ってことで、50ガルドにまけちゃう!!なんて嬉しそうに笑う女の子。言っている意味はむちゃくちゃな気がするけど、それが許されてしまいそうな笑顔で。何か依頼なら受けてみようかなという気になってきた。
……ところだったんだけど。
「ノーマ……お前、何でこんな所にいるんだ」
「おやー?セネセネじゃん。どったの?」
ノーマ、……ってことは。
「あなたがセネルの探し人?」
「探し人?……あ〜、そういや依頼届送ったかも」
「お前な……」
セネルと同郷で、アドリビトムに加入したいという人。この人が、セネルの言ってたノーマさんらしい。今回の依頼はノーマさんを見つけ出し、アドリビトムまで送り届ける……だった筈なんだけど。
「セネセネ、今手ぶらでしょ?あたしのお宝一緒に運んで、」
「自分で持てよそのくらい」
「え〜?セネセネのケチ〜!!んじゃあ、そこの……名前聞いたっけ?」
私と坊っちゃまを指差し、クエスチョンマークを飛ばすノーマ。気付かなかったけれどその足元には大きな袋が4つほどあり、とてもじゃないが1人では持てそうになかった。
ノーマはパチパチと瞬きをしながら私たちの自己紹介を待つ。ハロルドと似たタイプの女の子だな、なんて思ったりしつつ、しっかりとご希望に応えてみる。
「私はレツ、コッチはG、このむすくれてんのがスパーダだよ」
『よろしく』
「むすくれてるって何だよ……」
手短に自己紹介をすると、何事かを考え始めるノーマ。なんだろう、何かあっただろうか。しばらく様子を伺っていると、突然閃いたように顔をあげる。
「じゃ〜レツまる、じっちゃん、パっち!! 手伝って!!」
………てんてんてん、まる。
そんな感じの空気が流れ、セネルが1人、ため息をついた。
「レツまる?」
『じっちゃん……』
「パっち……って、俺か?」
「そーそー、スパーダだからパっち!!ね、お宝一緒に運んでよ〜」
複雑そうな声をあげるG、怒りを飛び越えどうでもよくなっている坊っちゃま。いろいろな表情の中、私はというと。
「レツまる……。なんか新鮮でいいね!!うん、運ぶよ運ぶよ。女の子には優しく、ね?」
「さっすがレツまる!!ほら、セネセネとパっちも!!男が廃るよ〜って、じっちゃんはムリか。んじゃ、あたしも一個持ちますか〜」
セネルと坊っちゃまは何か言いたげだったけど、結局G以外の4人がそれぞれ一つずつ袋を持つことになって。術でモンスターを蹴散らしながら、なんとかバンエルティア号まで辿り着いたのだった。
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