創造への軌跡book

□失礼ですよ
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「ここまでが文字の基礎だ。コイツらで文章を作ンだよ」

「ふーん。なんか面倒なんだね」


文句言うなっつーの。そう坊っちゃまに怒られながら、ノートと格闘する。

現在地はバンエルティア号ホール。そこにあるローテーブルで私と坊っちゃま……スパーダ・ベルフォルマ不良貴族は、珍しくも勉強中なのだ。

何故勉強する事になったかと言うと、昨日ついに(隠してた訳じゃないけれど)私が字を読めないと言う事がばれたのだ。勉強もみてもらえず放り出されていた坊っちゃまにとって、何か思うところがあるようで。今こうして、私の勉強に付き合ってくれている。


「レツ様、スパーダ様。お茶とお茶菓子はいかがですか?」

「ありがとロックス」

「悪ぃな。……じゃ、休憩か?」


ある程度キリのいい所だったから、お茶休憩になった。えーとコレは……アップルティー?ショートケーキと一緒に出されたお茶に口をつける。よくわからないけど、とりあえず美味しいのは分かるからいいや。

目の前では、ペース的に3口ほどでショートケーキを食べてしまう不良貴族。……今は2人だから平気なのかな。

私のルームメイト、ベルフォルマの七男坊、私のキョウダイ。兄貴面をしたがる彼に、深く深く沈んでいるであろう傷。私はそれを聞いたけれど、特別どうしようとは思っていなくて。きっと彼も、それをどうこうしようとは思っていない。


今は私たちの家族を守るだけ。


私も坊っちゃまも、家族に強い憧れがある。1人に一つが当たり前の家族。その二つ目は、アドリビトムなのだ。


「ンだよ、ジロジロ見ンな。冷やかしなら聞かねェぜ?」

「ちぇ、かっこつけのスケベ貴族のくせに」


ニヤニヤとした笑顔で言い合う。私たちはこれでいい。変に気遣う事はないんだ。重たくない空気で、気楽にやっていけばいい。



さて、勉強の続き。そうノートに向き直った瞬間。



ダッダッダッ

甲板を走る音。それが次第に大きくなり、近付いて来たかと思うと……


「レツ!!無事か!?」


私を見つけた途端、ベリリと私を坊っちゃまから引き剥がした。『セネル、おかえり』目をパチクリさせる私たちを尻目に、Gがのんびりと言ったのだった。


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