創造への軌跡book

□奇跡の存在
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ティッシュにトイレットペーパー、そして歯磨き粉にシャンプー。買い物メモに全てチェックが付いたことを確認して、ようやく店を出た。

今日は久々の買い物当番の日。人数もなかなか増えたから、当番の順番はめったに回ってこなくなり。代わりに買い物の量が一気に増えた。




「もうこれで全部だよな?」

「うん。さ、バンエルティア号に戻ろうか」

「おう!」




ティトレイは腕いっぱいに荷物を抱え、元気いっぱいに歩く。私は細々とした物を沢山持ちながら、船へと向かった。

今回の当番はティトレイとだったけど、案外買い出しには向いてる人なんだなと思った。時間がかかっても怒らないし、自分から進んで重いものを持ってくれるし。金銭感覚もしっかりしているから、安心して買い物が出来る。そういえばお姉さんがいるらしいから、そのおかげなのかもしれない。


ようやくバンエルティア号が停めてある港につく。船に着けば、後はみんなも手伝ってくれるから。重たいのは、もう少しの辛抱だ。

そう思って、気合いを入れ直していると。



ドンッ

「ッ、わっ」




背中に衝撃があって、軽くよろめく。前のめりになった事で、バランスを保っていた体が急に重さを感じ、倒れそうになった。でも、自分は格闘家。このくらいのバランス感覚は持っていないと勤まらないから。足を踏みしめ、踏ん張って耐えた。

ホッと息をつき、ふと前を見ると。腕をこちらに差し出した状態で固まっているティトレイがいた。




「……何してるの、ティトレイ?変なポーズ」

「いや、お前が転びそうだったから…。でもま、心配なかったな!」




ニカッと、嬉しそうに笑った。

あぁ、心配してくれてたんだ、なんて思う。でも、心配されるほどの事じゃなかったと思うんだけど。そういうのは相手を見て、女の子にすればいいのに。親切の無駄遣いというか…とりあえず、人の良い奴だよなぁと思った。

それに適当にお礼を言い、衝撃の原因を知るため振り返った。すると、そこにいたのはやせ細った男の人。




「す、すみません…。……ゴホッ、ゲホッ………。お怪我、は……?」

「いや、無いですけど…」

「おっさんの方こそ大丈夫か?顔色悪いぜ?」




まだそこまで年じゃないだろうに、腰をひどく屈めて立っていて。込み上げる咳を必死でこらえているようだった。真っ青な顔は、明らかに健やかさを感じさせない。




「私たち、ギルド・アドリビトムの者です。よろしければ、病院まで送りましょうか…?」

「あー、依頼とかじゃねぇから金はいらねぇよ。困った時はお互い様、ってな」




私たちが声をかけると、男の人はバッと顔を上げる。そしてまた咳を一つし、辛そうな中かすかに微笑んだ。




「アドリビトムの方でしたか…!なんて運がいいんだ。……ゴホッ、…ちょうど、訪ねようとしていた、所なんです」




お客さん、だったみたい。私とティトレイが顔を見合わせていると、男の人がまた咳を繰り返す。急いで駆け寄るけれど、男の人に手で制されて。ようやく落ち着いた所で、また話し始めた。




「…私は、ジョアンと申します。………アドリビトムに、…ゲホッ、護衛の依頼をしに来ました」




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