創造への軌跡book

□赤く染まる
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バランスを崩した所にさらに追い討ちをかけ、投げ飛ばす。魔物が明らかに動けなくなった事を確認し、息をついた。

振り返ると、みんな同じように一息ついていて。走り回る私はもちろんの事、術を唱える2人の額にも、汗がにじんでいる。それほどまでに、火山の中というものは暑かった。


私たちは少し前、このオルタータ火山にたどり着いた。船で近づくだけでも熱気が伝わって来たけれど、内部はいっそう酷い。それだけならまだしも、魔物も当然のように現れて。辛いけれど、倒しながら進むしかなかった。




「お疲れさん。バテてねぇか?」




矢を矢筒に戻しながら、チェスターが声をかけてくる。今日初めて会って、初めてパーティを組んでいる訳だけど。彼はクレスの言う通り、かなり強者だなぁと思った。私が反応し辛い場所にいる敵を見極め、無駄なくしとめてくれる。だから、私も目の前の敵に集中することができた。

チェスターは、一番運動量の多い私を気遣ってくれているようだった。それに私は、平気だと応え。再び先へと進み始める。


……“赤い煙”。


私たちが、ココに来た理由。星晶が採掘され尽くした辺りから出てくるというソレは、果たして何なのか。そして噂通り、生物変化現象と何らかの関わりがあるのか……。見極めなくちゃいけない。

チェスターに任務の説明をする時、聞いてみたけれど。星晶の枯渇から起こる現象は知っているけれど、“赤い煙”は知らないらしかった。一部にしか見られない現象なのか、それとも発見されていないだけなのか。とにかく情報が足りない。




(偶然にでも、見つけられたら…)




星晶採掘の後、必ず起こるものなのかわからない。その現象が、どのくらいの時間続くかもわからない。もし一瞬の出来事であるとしたら、なかなか見るのは難しいだろう。偶然、ちょうどのタイミングで見られないだろうか?




「………考え事してる所悪ぃんだけどよ。………何してんだ?」

「へ?」




前を歩いていたチェスターが足を止め、こちらを振り返った。その視線は私の手元に向けられている。




「さっきから気になんだけどよ…。俺の髪に、何か付いてんのか?」




手元を見ると、無意識にチェスターの髪で遊んでいる自分がいた。どうやら考え事をしている間、ずっといじっていたらしい。さすがに不思議に思ったらしく、チェスターが様子をうかがう様に私を見ていた。




「ああ、ごめん。無意識の内に…」

「ちょっと、レツ?また女の子と間違えたとか言わないでちょうだいよ?」




私がパッと手を離すと、ルビアが呆れたように言った。それにウィルもプッと小さく吹き出し、チェスターがいっそう不思議そうな顔をする。チェスターが説明を求めるような視線をウィルに送ると、ウィルは少し微笑んで言った。




「いや、つい今朝の事なんだが…。レツが髪の長い男を女性だと勘違いしてな。騒ぎになった所だったんだ」

「レツはね、ビックリするくらい女の子が大好きなの。だから女の子には優しいんだけど、男には容赦ないから。気をつけてね?」

「酷い説明だなー…」




ウィルもルビアも、説明が酷すぎる。確かに女の子は好きだけど、それじゃあまるで、ナンパ男みたいだ。念のため言っておくけど、ただ親切にしたいだけなんだ。レディーファーストの精神というか…?自分でも、どう説明していいかわからないけど。

2人の言葉に、チェスターは複雑そうな顔をする。どう反応していいのか、みたいな表情に見えた。




「大丈夫、チェスターは間違えなかったから。……でも、何でキールは間違えたのかなぁって思ってさ。そのせいで、かなり嫌われちゃったんだよ」

「ま、当然だろうな」




凹んだ調子で話すと、チェスターが面白そうに笑う。笑いごとじゃないんだけど、と返すと、自業自得だと言われてしまった。まあその通りか。

私の失敗がバレてしまったけど、チェスターと普通の話が出来てよかったなと思う。堅い話しかしていなかったから、仲良くなれた気がして嬉しかった。




「休憩も取れただろう。お前たち、先に進むぞ」

「はーい」




そしてまた、奥に向かって歩き始めた。




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