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□もしも剛三郎がいい人だったら3
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「劇場版遊戯王がとうとう公開された。そこで瀬人!今日はこの父自らお前に祝辞を贈ろう!」

「……磯野。会議はどうした。オレにはこの干からびた猿しか見えないのだが?」

「そ、それは…」

「くっ、今日は一段と手厳しいな。謀ったことは詫びるが、社長業に加え今回の映画で多忙を極めたお前との時間を作るにはこれしかなかったのだ」

「黙れやはり貴様の仕業か!磯野まで抱き込むとは卑劣なマネを!!」

「照れるな我が息子よ。子供の晴れ舞台に親が一肌脱ぐのは当然だろう」

「その気色悪い思考回路は死なねば治らぬらしいな」

「せ、瀬人様!どうか頭上のジュラルミンケースを下げてください!!ここで不祥事を起こせば映画が、これまでの苦労が水の泡に!!」

「くっ……」

「反抗期は相変わらずか。だが瀬人よ、お前も子を持てばきっとわしの気持ちがわかるはずだ」

「義父の分際でほざくな。それに貴様のような親になるくらいならば死んだ方がましだ」

「まあまあ祝ってくれるって言うんだからいいじゃない、兄サマ」

「モクバ、お前まで何を……」

「そうだ瀬人、今日ぐらいもっと素直になってもよいのだぞ」

「黙れ、貴様の意見など聞かぬわ。さっさと済ませろ」

「フフ、そろそろ目から熱いものが込み上げてきそうだが、今は甘んじて受けて始めさせてもらおう。


瀬人、今回は劇場版遊戯王がついに公開となる
この一大イベント発起からお前はますます多忙の身となったが、お前は自らに課せられたハードルを見事乗り越えて見せた。今更ながら父として誇りに思う。
オレも親として何かしてやりたかったが、結局お前の荷を1割も背負ってやれなかった。
情けない父と笑ってくれ。
だがそんな愚かな父と一つだけ約束することを許してほしい。お前は厚かましいと思うかもしれんが、全てが終わったら私の元へ来てくれ。お前はとっくにこの手を離れてしまったが、お前がまた一回り成長した姿を見せて欲しい、何よりこの父の元に帰ってきたことを実感させてほしいのだ。


モクバよ。お前もよく頑張ってくれた。副社長としての働き、瀬人へのサポートはよほど私より会社と瀬人の支えになってくれた。この一年での成長は兄をしのぐかもしれん。だがもっと周りを頼ってよいのだぞ。能力は高くともお前はまだ子供だからな
そしてモクバも全て終わったら瀬人と顔を出しに来てくれ。久しぶりに親子水入らずの時間を過ごそうではないか」

「と、父さん…(じーん」

「剛三郎様…(ハンカチで目元をぬぐいつつ」

「……」

「さあ、わしにしてやれるのはこれまでだ。最後の踏ん張りを見せてこい!」

「う、うん!」

「……フン、貴様の意見など知ったことではない。だが最後はその間抜けな顔を拝みに来てやる」

「「「!!!」」」

「それまで首を洗って待っているのだな。ではオレは行くぞ。貴様のせいで無駄な時間を過ごしたからな(バタン」

「磯野、見たか?今の……」

「ええ、この目でしっかりと」

「おおおおお!!!瀬人がデレた!!瀬人がデレたぞおおおおおお!!!!」

「お、落ち着いてください!剛三郎様!」

「磯野!今のは録画録音ともに抜かりないだろうな!?」

「えっ、も、申し訳ありませんが…」

「ええい役に立たん奴め!いや待て、この部屋に設置してある監視カメラからデータを取り出せば済む話ではないか!画質音質はこの際諦めよう、これは瀬人専用フォルダ一番の宝になるな!」

「……兄サマが出ていった後でよかったな」

「ええ、先ほどの言葉に免じて瀬人様には黙っていましょう」



このことがどこからか瀬人に漏れ、瀬人が剛三郎に絶縁を迫るのはもう少し後の話
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