本 1

□上編
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「二宮、くん…」

話し掛けると二宮は振り向き、お化けか何かに会ったような顔になった。

へぇ、二宮から会話の糸口を作ってくれるとは…嬉しいねぇ
からかって遊んでやろう。

「あはっなにその顔っ!ふふっ…お化けか何かに会ったみたいな顔。あはは!」

笑ってやった。

そしたら二宮は慌てて否定しようとしたらしくかんでいた。

「ち、違っ!綾瀬がうひろにいたかりゃ!」

ってね。かんだことの恥ずかしさからか顔を真っ赤にして「うああぁぁ…」ってどもってるし。

思わず笑ってしまった。
頬が痛かった。
そういや、どこぞの毬藻に構って仕事しなくなった馬鹿どもの頂点に殴られたんだっけ。
いってぇ…

「綾瀬!大丈夫か?」

大丈夫に見えんのかよ。まぁやぁっさしぃやっさしい宝永くんはそんなこと言わねぇけどな?

「大丈夫ですよ!」

ちょっと痛かったけど笑ってやった。
わざと眉をハの字にしてさ。
痛々しさ全開ですっ!

「っ、綾瀬…誰に遣られたんだ?」

おおう。真剣な顔しやがったよ。
どうせなら鏡音先輩に心配されたかった。

(綾瀬、誰に遣られたんだ?)
(鏡音先輩を狙う輩…かな?)
(えっ)
(大丈夫、俺が絶対守るから)
(…宝永)

うへへ、ちょw俺カッコイイww

ピーピロロン♪

せっかく良いところだったのにメールがきた。
「メールだ…」って呟きながら開くと差出人は雪那で、本文は『勝手に妄想翔ばしてないで、さっさと二宮堕とせ!
俯いてたから二宮にはバレてないと思うよ!』

い、一体どこから見ていたんだ!
冷や汗がどっと出てきて、監視されてると思うとぶるりと体が震えた。

それを二宮は言い方に勘違いして下さいまして、

「あ、ごめん。言いたくなければいいんだ…」

って。
好都合!

だから俺は冷や汗を涙代わりにして顔を少しあげて

「ありがとう。」

って笑った。

さて、教室行くか。



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