Novel

□風邪
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「―くん…木君」
「や、やだなぁ…やめろっ…て…」
「高木君」
「ん…さと……へっ!?」その瞬間、高木は椅子から転がり落ちた。
「す、すいません!手、そ…の」
クスクスと、佐藤は笑っている。

「さ、佐藤さん…ι」
「びっくりしたわ。目が覚めたら、高木くんが手を握っててくれたんだもん」
「それはっ…その…//」
「ありがと。」
「あ…い、いえ。体の調子、どうですか?先生は風邪って。」
「えぇ。まだ少しダルいけど…だいぶ楽だわ」
「そうですか‥。あ、今日退院出来るそうです。それと、目暮警部に連絡しときました。今日1日は家で休めと…」
「そう…。やっぱり病院から出られるのは嬉しいわ」

佐藤さんらしいな。と、高木は微笑んだ。




手続きを済ませ、病院から出ると、千葉に回してもらった自分の車に向かった。警部に連絡した時、頼んでおいたのだ。


「じゃあ、行きますよ?」「待って…」
「…?どうしました?」
「まだ…帰りたくない…」

そう言った彼女の顔は赤くて。額に汗が浮かんでいる。言葉の所為じゃなく、また少し熱が上がっているようだ。

「…今日は家でゆっくり休んで下さい。今少し油断したら、早く治る風邪も治らなくなっちゃいますよ?」
彼女が頷くのを見ると、高木はタオルを手渡した。
「綺麗ですから」
「わかってるわよ…」
念を押す様に言ってきた高木に笑いながら受け取った。



「ありがと…わざわざここまで来てくれて」
マンションの佐藤の家までは階段があったこともあり、心配して付いてきたのだ。
「いえ、僕が勝手に来ただけなので。…ゆっくり休んで下さい。」
「了解。」
イタズラっぽく敬礼した彼女に、嬉しくてにやけそうになる。
「あ、もう入っていいですよ。じゃ、僕はこれで…」
急ぎ足で歩き始めた時
「今度は上がってって…?」
佐藤がドアから顔を出してそう言うと、微笑んでその場を去った。
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