Novel

□風邪
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「よし、終わった。どうです?佐藤さん」
「…あと少しよ…悪いけど、コーヒーお願い出来る?」
「あ、はい!……佐藤さん、大丈夫ですか?」
「平気よ♪お願いね」

その笑顔に押され、頷くと、高木は一課を出た。


今日は2人して夜勤か。日にちは変わってるけど。嬉しいような、嬉しくないような…。昼間も佐藤さんと張り込みだったし、勤務中にこんなに一緒になったのは久々だなぁ。





数分たって戻ると、佐藤さんの姿が見当たらない。
「あ、れ…佐藤さん?おかしいな…」

「佐藤さ…」

佐藤がデスクの前で倒れていた。

「佐藤さんっ…!?」
「……」
「佐藤さん!佐藤さん!すごい熱だ…そ、そうだ…救急車…」


救急車を待つ時間がやけに長く感じる

「救急車、もうすぐ来ますから。大丈夫ですよ!」


え――?

佐藤さんのデスクを見ると、まだ途中の書類が半分程残っていて。倒れていた佐藤の周りには書き終えた書類。おそらくコピーをと、立ち上がった時だろう。






「風邪ですね。疲れが溜まっていた様ですし、体の免疫力が低下していたんでしょう。」
「そうですか…」
「まぁ、明日には熱も下がって退院出来ると思います。」
「はい…。ありがとうございました。」



ったく…。今日はずっと佐藤さんと一緒だったのに…何で俺は彼女の体調に気付かなかったんだよ…。


自己嫌悪になりながら、1日の出来事を振り替えっていると、いつのまにか病室の前に来ていた。



(佐藤さん…)

佐藤さんのあの書類がやっと残り半分だったって事は…相当無理してたんだな…

さっきより落ち着いた表情で眠っている彼女がいても、安心しきれない。
風邪だって、あんな高熱でいきなり倒れてしまえば不安でしょうがない。それが彼女だから尚更…。
そんな気持ちを振り払うように、彼女の手を握り締めた。
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