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□閉話羅列
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そう、それは非常に突然だった。

深雪:「長らく世話になった。達者に暮らせ。」
御影:「ちょっ、おい待て!意味わかんねぇよ!」
深雪:「だから先程から申しているであろう。我等“Closed Ring”は今日今この時を持って解散すると。」
御影が初等部時代からずっと一緒に仕事してきた相棒(パートナー)から、いきなりの解散宣言。
御影:「だからそれが意味わかんねぇっつってんだろ!」
淡々と古びた草鞋の紐を結ぶ深雪が、御影には理解できなかった。
瑠奈:「ゆきちゃん(深雪)出かけるのー?」
深雪:「あぁ、少しばかり遠くまで出ねばならぬのでな。」
トントンと、草鞋の履き心地を確かめる。
環:「お帰りのご予定は、」
深雪:「無い。」
環:「!?、そんな・・」
不確定な訳では無く、深雪には、帰ってくる意思が無いように思えた。
心配はしていない。深雪の強さは知っている。
例え一個艦隊に単身喧嘩を売ったとしても、こいつならのうのうと生きて帰るだろう。
だが、ならこの不安感は何なのだろうか。

ガチャ・・

扉が開き、外の光が屋内に差し込んでくる。
御影:「・・・本気なんだな。」
ここ数年使ってないくらいの真剣な視線で深雪を見る。
深雪:「・・・くどいぞ、」
御影:「っ!!、勝手にしろっ!!」
深雪:「そうさせてもらおう。では皆の衆、さらばだ。」
環:「・・・」
深雪は外へと歩みを数歩、進めると、何を思ったかこちらに向き直った。
深雪:「そう、思えば最も大切なことを忘れておった。」
と言いながら、深雪は御影にいつもと変わらぬ視線を向ける。
御影:「・・・・・・なんだよ、」
深雪:「明日のこの時間、家の外で少しばかり待っていてくれぬか。」
御影:「・・何を?」
深雪:「なに、些細なモノだ。」
一瞬の沈黙の後に、御影は溜息を一つ。
御影:「わぁったわぁった。相棒からの最後の願いだ、面倒いが抜かり無く遂行してやる。」
深雪:「感謝する。」
御影:「・・・・」
深雪の考えが読めないのはいつものことだ。
明日になればわかるのだし、余計な詮索はしないことにした。
深雪:「では二回目だが、さら」
環:「っ、マスターッ!!!」
別れの言葉を遮ったのは、環の主を呼ぶ声。
深雪:「・・・・何だ、」
深雪は、いつもと同じ口調で、環に続きを促す。
環:「・・もぅ・・・・・もう再び逢えることは・・・・無いのでしょうか・・・・」
環は今にも泣き出しそうな声で問い掛ける。
深雪:「・・・・・・・環、一つ仕事を頼みたいのだが、良いか。」
環:「・・・・・はい・・・」
環の声は震えている。
深雪:「・・この家を頼む。これが、お主のマスターとしての、最後の命令だ。」
環:「、〜〜〜〜っ!!」
堪え切れなくなった涙が、環の頬を伝う。
深雪:「では今度こそ、さらばだ。」
瑠奈:「ばいばーい。」
茜色に染まる夕刻の空。
長く伸びた影と、それに反しあっさりとし過ぎた別れ。

こうして御影の相棒は、手ぶらで突然旅立った。



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