人間・死神・破面・仮面のお話

□想い、想われ。振り、振られ。
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 有沢たつきの想い

さらさらと流れゆく川。




夕暮れの太陽は綺麗な橙色でなんとなく、嬉しくなった

「織姫ー帰るよー」


あいつの笑顔は昔も今も変わらなく温かくて目を潜めてしまうほど眩しい

それはまるで太陽でその背中を追うことすら叶わぬ夢


―なんて。織姫に感化されすぎだあたし。






「なーにブツブツ言ってんの!!ほら、もたもたしてるから教室残ってんのあたしらだけだよ?」



「今週の週刊文春だよ!なーんか難しいことばっかりでさっぱりだよ!」



「渋っ!あんた笑点とか週刊文春とかおばあちゃんかっての」



「うわぁホントだ!あたしたちだけだね、たつきちゃん!」



「うん、まず人の話聞こーね…」


「あれ?お前らまだいたのか」


「黒崎くん!」

「おぅ一護、なんだ忘れもんか?」


好きな奴の、一護の気配を感じとって誰よりも早く声をかけられる織姫はすごい

あたしには友達としてつまらない会話をすることしかできない。


織姫が羨ましい
あんなに一途に一護を思って素直に恋心をさらせるのは織姫だけだ



「あぁ、ちょっとノートを取りにな。てゆーか井上それ何読んでんだ?」



ほら、一護は優しい奴だから何も喋れなくなる織姫にだってちゃんと話しかける


「あ、こ、これ?週刊文春!深くて壮絶な文章の中に細やかな幸せと熱がかいまみえるストーリー、すごく面白いよ!」


織姫がドキドキしてるのが手にとるようにわかる

あたしもそうだから。


「お、おう。そうか
…もうこんな時間か。帰るぞたつき、井上」



「なんだよ一護、一緒に帰んのか?」



「もう真っ暗じゃねーか。たつきはともかく井上が危ねぇだろ。」


やっぱりね。
こいつはあたしのことそもそも女だってわかってんのか?
一度だってあたしのこと女扱いされた覚えがない

小さい頃に“たつきちゃん”って呼ばれてたことを除けば。


「あたしが何だって?」


「だ、大丈夫だよ!あたしもたつきちゃんから習って護身術くらいは身に付けてるから」


「いーから、ごちゃごちゃ言ってねぇで行くぞ。どっちみち帰る方向同じなんだから」



他人を放っておけない
それは一護の優しさ


昔それは唯一、泣き虫一護の長所だった


いまでもそういうトコがなくなんないのは嬉しい

けど最近は誰かがその優しさに気付いてしまうことが悲しい


それが例え、織姫でも。



優しさはあたしだけが知る一護の本当の姿だから


一護が誰かに優しくするだけであたしの想いは流されていく



そう、さらさらと。




この想い、どうやって心に押し止めておけばいいの



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