人間・死神・破面・仮面のお話

□深窓の姫君
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桃様はこの国の皇帝の長子としてお生れになった。 

皇后様は何度も流産を繰り返され、お年も決してお若くなかったので待望の安産の報告に国中は湧いた 

しかし皇后様は、長年の皇室からの圧力にお疲れになっていたのだろう、ご出産の後、生まれた赤ん坊をその手に抱くことなく永眠なされた。 


皇帝はひどく哀しみ、生まれた赤ん坊を皇后様の分まで寵愛した。 

赤ん坊は女の子だったが、皇帝はそれ以上お子を望まれなかったのでこの生まれたばかりの赤ん坊が第一位王位継承者となった。 



赤ん坊は桃様と名付けられ、下位の王位継承者の親類に命を狙われることを避け、表舞台にはほとんど現れなかった。 



そのうち、桃様は城の中で監禁されているという噂が流れた。 


このことから国民は桃様を『深窓の姫君』と呼ぶようになった。




























昨日の番から仕込みをしていただけあって、今日のスープの出来は最高だった。


「お、うまいじゃねぇか。ずいぶん上達したようだな。」

料理長の阿近が横から味見をする

「どうだ、今度こっちで働いてみるか?月給は低いが毎日上等な飯が食えるぞ」


「いえ、僕は…」

気のきいた断りの言葉が思いつかず口を濁す

「冗談だよ。お前のがいいもん食えるし月給は俺らの三倍だもんな」


「そ、そんなにもらってませんよっ」


否定はしたものの、実際僕が他の人と比べてどれくらい給料をもらっているのかわからなかった。

そんなこと考えたこともなかった。

確かに少なくともこの城で働く者の中で下から2番目の料理班よりはもらっているかもしれない


「お姫さんの食事、ここに置いておくぞ」

そう言い残して料理長は消えた
相変わらず忙しそうだ
たしかに人手不足だから僕を料理班に入れたいのはわかる

だけど僕はスープしか作れない


何か姫のために作りたいと思ったのがきっかけで、少しずつ練習してやっと姫に出してもいいと料理長のOKが出た努力の一品。


今では彼女の大好物だ


僕はそれを料理班が作った他の料理と一緒にトレーに乗せて運んだ

ゲストが来たときには戦場と化す広い調理場の裏口から出て本城から少し離れた高い塔に入る









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