人間・死神・破面・仮面のお話

□虚像
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白を基調とした造りの宮殿の中をウルキオラは歩いていた。 

表情は無く、交互に繰り出される足だけが迷うことなく前へ前へ体を進ませる。 

この淡々と歩く様からどうしてこの男に迷いがあるように思われようか。否、思いもしない。 


だが事実、彼は迷っている。


もしもこのまま目的地に着いてしまえば彼はきっと後悔するだろう。

それでも彼は行かなければならない。
命令なのだ。
この世界では絶対的な権力を持つ『神』と言う名の支配者、藍染惣右介。
彼に与えられた、絶対的な命令。 
そう、彼に拒否権はなかった。 

この世界において、ウルキオラは数えて4番目の実力を持つ虚だ。
だが『神』の下ではそんな数字は無意味に等しい。 

強かろうが弱かろうが『神』に逆らう権利などみな等しく皆無なのだ。



「ウルキオラ様。」
後ろから付いてきた従官がなかなか先へ進まないウルキオラの背中を恐る恐る見上げた 

「お急ぎください。藍染様がお待ちです」
ウルキオラは立ち止まりちらりと後ろを一瞥した

「お前、」

「はッはい」

「ここからは付いてくるな。目障りだ」

威圧され、反抗の言葉も出ない従官はそのまま道を折り返した


ウルキオラはまた歩み始めた。 


やがて天井まで高く伸びた高貴な扉の前に辿り着いた。 


この向こうに、いる。 




ウルキオラは一瞬、顔を歪めてそれから扉を開く。 

何も、悟られてはいけない。 

この胸の中にある戸惑いに気付かれてしまったらこちらの負けだ。 




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