人間・死神・破面・仮面のお話

□キミの麗し・ボクの戸惑ひ
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真央霊術院に首席で入学

特進クラスでも成績は優秀

人並みに人望も厚く
死神になってからも副隊長になるまでにたいした時間もかからなかった


そんな僕が苦手なもの…


「吉良くん」

久々の宴会で酔いも充分回ってきた頃に雛森さんはやって来た

「今日はごくろうさま」

そう言って雛森さんは僕の空いたお猪口に酒を注ごうとしたので僕はそれを手で塞いだ

「…もうたくさんだよ。雛森くんは?」

「じゃぁ、少しだけ。」

僕は空いてるコップを見付けると雛森さんに渡して酒を酌した

「ありがと。」

雛森さんは花のように、にこりと笑った



そんな彼女をうっとりと眺めていると隣で飲んでいた隊士の一人が雛森さんに絡んできた


「雛森副隊長〜
一緒に飲みましょうよ〜」

僕は慌てて雛森さんの華奢な肩に腕を回す男の腕を掴んだ


「いでででで」


「少し、立場をわきまえろ」


「吉良副隊長、すんません」



謝ってもすぐにまた雛森さんに手を伸ばす男に呆れて僕は言った

「出よう、雛森くん」

「う、うん。そうだね」



宴会会場を抜け出して縁側に出るとちょうど月が綺麗に見えるような場所を探して腰を降ろした


「ふぅー…」


腰を落ち着けてすぐに息を漏らしたのは雛森さんだった


その愛らしい容姿は多くの男性死神を虜にし、時々さっきのような柄の悪い隊士に絡まれる

彼女もそれにはもう慣れっこのようなのだがいつも泣きそうな顔をする


それを見て、いつもすかさず彼女を助けるのは僕…じゃない


「ありがとう、吉良くん」
「いや、僕もちょっと酔いを冷ましたかったところだから」

「吉良くんは優しいね」

そう言って雛森さんは悲しそうに笑った
さっきの微笑みとはまるで違う

「僕なんかより優しいだろう、日番谷隊長は」

その名を聞いた途端、雛森さんはビクッと肩を震わせた

やっぱりそうか…


「なんかあったのかい?今日は少し元気がないみたいだ」

「…うん。」

彼女は、それ以上何も言わなかった


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