日雛のお話

□帰り道
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「お待たせ。はいこれ!」
桃は自作の花飾りを冬獅郎の頭に乗せた

「なんだよこれ」

「お花の冠だよ。可愛いでしょ?」

「見えねぇし。つか俺に渡すな」


ほら、と冬獅郎は桃の頭に冠を乗せた

「可愛い?」

「知るか」

それは冠なのか桃の事なのか冬獅郎には分からなかった(当然桃は冠の事を聞いているのだが)

「…せっかく作ったのに」

やっぱり冠の事か…と冬獅郎は思った


「シロちゃん!」

「なんだよ」

「はい!」

桃の手のひらの上には花飾りと同じ花を集めてつくった小さな花束


それを差し出す桃の姿はあまりにも


「…可愛い」

「えっ?」


しまった、と冬獅郎は目をそらす

桃は頬を染める。
めずらしく正確に言葉の意味が分かったようだ

「花嫁さんみてぇだな…」

目をそらしたまま冬獅郎が呟く

さらに頬を赤くして桃は言った


「本物の、綺麗な花嫁さんになりたいな」


シロちゃんの…と言う言葉は出なかった


「なれんじゃねぇの?」


桃は顔をあげた


「まぁ相手がいればな」


「…ひっどーい!」

桃は冬獅郎の小さな体に飛びついた

「うわっ?!」




「そんなの…シロちゃんに決まってるよ」

耳元で小さく囁く桃に冬獅郎は頬を染めた

「お、おぉ」





帰り道。
可愛らしい小さな2つの陰が夕日と共に消えていった




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