日雛のお話

□雪解け
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「あの、日番谷君。」

取り残された雛森。
客観的に見て今この場に最もいなくても良い存在なのだが。


「あぁ、書類はそこに置いておいてくれ。」


日番谷はそれ以上何も言わなかった。
帰っていいのか
駄目なのか
この言葉からそれを判断することは幼馴染みの雛森ですら難しかった。


トコトコトコ…パサッ

出来る限りゆっくりと書類を置きに行き、その場でひたすら書類とにらめっこする日番谷を上から覗き見る。


「…なんだ。」

あまりにもゆっくり過ぎる雛森の動きがさすがに気になり、書類から目を離し雛森を見上げる。


「な、なんでもない。」


目が合い、とっさに背をむけて窓の外を眺める雛森。

「雪、解けちゃったね…。」
「あぁ。」

「春、もうすぐだね」

「あぁ。」

返事はそっけないがさっきより確実に優しい口調の日番谷。

そして

「今年はみんなでお花見行きたいな。隊長さん達もみんな集めて」
「そうだな。」
次の返事は雛森のすぐ後ろから聞こえた。
「うわっ!びっくりしたぁ、お仕事いいの?」
「飽きた。」

この少年は飽きを理由に仕事をさぼるほど餓鬼ではない。もっとも、いい大人でもさぼる奴はいるが。(某隊副隊長がいい例だ)
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