日雛のお話第2巻

□nightmate
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「なんだよ、もう帰んのか?」


結局何しに来たんだ、こいつは。
だけど責めることはできない
 これも、惚れた弱み。


「うん。日番谷くんの顔見れただけで良かったから」


雛森が笑う
だが俺は顔をしかめる 



部屋を出ていこうとする雛森の手を掴んだ



「…何があった?」


その瞬間、雛森は掴まれた手から崩れるように倒れこんできた 



その体を優しく包み込み、背中をさすってやると雛森が啜り泣いているのがわかった 

顔を見ようとゆっくり放そうとするといやいやをして放れない


「本当にどうした?俺に甘えるなんて、お前らしくねー。」

それでも俺は雛森をぎゅっと抱き締めた


「…なんでも、ないの。ほんとに大したことじゃないの。ただ不安になって…日番谷くんに会いたくて…」



その言葉を俺の体はまだ信用してないらしく、俺の腕はまだ雛森を包み込む力を緩めない 

だけど頭ではわかっていた。
職業柄、ある時突然理由もなく不安が押し寄せることを。
そんな時には決まって誰かの傍にいたくなることも。

俺だってその例外じゃない



だから雛森がそうなった今、一番に会いたいと思ってくれたのが俺だってことが素直に嬉しかった。

もしかしたら、信用してないのはこのことの方かもしれない 



俺の体は頭が冷静なのと反対にいつもより敏感に機能していた 

その証拠に俺の心臓は雛森に聞こえてしまいそうなほど高鳴っている



「一人が不安ならここにいてもいいぞ。」


「そんなの、…悪いよ」

いつもは平気で仕事の邪魔するくせに何をいまさらと思う

こんな時こそ頼られたいと俺が思っているのは彼女には伝わらないらしい

「遠慮すんなよ。つーか俺が心配だからここにいろ」



「…いいの?」



「あぁ。」


俺は笑顔が零れた。 
そんなこと久しぶりだった


雛森に頼られることがそれほど嬉しかったのだろうか。 
やっぱり今日の俺はどこか変かもしれない


気持ちより先に体が動く 
少しフライング気味だ。



眠そうに雛森が目をこすったのでもう寝るように促した


「布団ないから、あたし畳の上で寝る」



「何言ってんだ?布団ならあるだろ?」



「え、でもこれ日番谷くんのだし…」


「あぁ、もちろん。だけど平気だろ?こんだけあれば二人くらい…」


「え、まさか…」








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