日雛のお話第2巻

□コンコン感謝!2
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「たいちょー!」

脇に小包を抱えた乱菊があからさまに浮かれた声で隊舎に戻ってきた


「何だ松本」

また何か企んでやがるなと眉をつりあげ、日番谷は答えた


「今日何の日だか知ってます?」


「は?」


「知らないんですかァ?今日は…」

「バレンタインデーだろ?」


「‥‥‥っえぇぇ?!隊長知ってるんですか?
意外〜♪」



「去年も言ってただろ。それにもうこっちにも広がって今じゃ尸魂界中が知ってる事じゃねーか」


「それもそうですけどー隊長はそーゆうの鈍感だから興味ないのかと思いました」


「ねぇよ。だが朝っぱらからこんなんあったら嫌でも気付くだろ」


隊長机の後ろに山積みになったチョコレートを見て日番谷はため息をついた


その山に気付かなかった乱菊はわぉ、と目を見開いた

「隊長やりますねぇ」

「あ?」

日番谷は不思議そうに乱菊を見た

様子がおかしい日番谷に乱菊も不思議そうに日番谷を見る


「日番谷くーん!」

聞き慣れた呼び名が隊舎に響く

日番谷の姿を捕えると雛森は嬉しそうに寄ってきた

「はい、これ!さっきできたの」


美味しそうなブラウニーが皿に綺麗に盛られている

「あっ包装してほしかった?ごめんね、可愛いリボンがあったんだけど」

「…つーか。」

「?」


「なんなんだよお前まで!」

きょとん、とする雛森に迷惑そうに日番谷は答える



「だいたいいくらなんでもあげりゃいいってもんじゃねぇだろ。こんなに菓子もらってどうしろっつーんだ!」


「た、隊長!」

日番谷の無神経な言葉に乱菊は慌てて口をはさむ


が、時既に遅し。


「…っふぇ…ご、ごめんねっ…迷惑だよね…」



「あ?お、おい…;」

泣き出した雛森に驚く日番谷。乱菊はあきれたように自分の隊長を見た


「あ、あたし…帰ります。」

なんとかこぼれ落ちる涙を抑え込み雛森は微笑んだ



「ごめんね、日番谷くん」


去っていく雛森の背中を日番谷は厳しい表情で見る


「なんだよ、あいつ…あれくらいで泣くか?普通。」

怒りに震えているのか乱菊はいつになく厳しい表情で静かに言った

「隊長…バレンタインデーって何する日か知ってますか?」



「あん?菓子あげる日だろ?たしかチョコレートとか言う…」


「…それは誰にあげる日か、もちろんご存知ですよね?」


「は?別に誰でもいいんだろ。皆知ってる奴に片っ端からあげるんじゃねぇのか?」



はぁ、とひとつ。乱菊はため息をついた


「それは義理チョコって言って友達や家族にあげるものです。まぁ、隊長の側にあるそれは全部本命でしょうけど」


「本命?」


積み重ねられたチョコの山を一瞥して乱菊は続けた


「本来、バレンタインとは女の子が一番好きな男の子にチョコを贈る日なんですよ。」



言葉の意味を理解して日番谷は真っ赤になる


「…っ…」


「普通本命には手作り、義理は買ったものをあげるんですけどね、雛森が手作りあげてるのさっき初めて見ました。他の人は全部義理チョコですよ」



日番谷は赤くなったまま眉間に皺を寄せた



「…しばらくそこで反省しててくださいね。」


今は一人にした方が良いと判断した乱菊は側にあった“三番隊”と書かれた書類をひょい、とつまみあげると隊首室を出た



「あーぁ、隊長にチョコ渡しそびれちゃったわ」


ずっと抱えていた小さな包みを掌で包み乱菊は一人、呟いた


「ま、いいか。あんまりもらってなさそうな吉良にでもあげよ♪」



とっさに掴んだ書類が三番隊へのものだったことを確かめ乱菊は三番隊へ向かった


まだ温かいチョコマフィンが入った小包を抱えて。


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