長い歴史に爪痕を刻む

□接近戦
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「どうもありがとうございました」


シャワールームから出てきた彼女は入る前と同じ格好で出てきた
まるでシャワーを浴びていないかのような普通の姿に驚いた


もっとこう…髪が濡れて下ろしてあったり、肌がピンク色に染まってたりするのを想像してたんだけどな


ってこれじゃ僕がムッツリスケベみたいじゃないか




「石田さんは入らないのですか?」



「え?」



「…びちょびちょです」


「あぁ。いや、僕は君が帰った後で構わないから」



「それでは風邪をひいてしまいます」



もしかしていますぐ帰るつもりじゃないのか?


これは…
チャンスだと思っていいのか…?


「じゃぁ、お言葉に甘えさせてもらうよ」



脱衣所で眼鏡を外し鏡を見ると絶句した
これは酷すぎる
鏡に映った顔は耳まで真っ赤に染め上がり実に締まりのない表情だった


こんな顔をネムさんにずっと晒していたと言うのか…

激しい自己嫌悪に陥ったところで浴室のドアを開けた

と、すぐに気づく
微かな違和感

使い慣れた浴室は普段と違う微かな甘い香りを放っていた


ネムさんの匂い…


ってこれじゃムッツリどころか本物の変態じゃないか!!



落ち着け雨竜



こんなことしてる場合じゃない
今はまだリビングにネムさんがいるんだ
下手をすれば嫌われる
少しでも快適で楽しい時間になるようにもてなして…住宅販売の営業か僕は!



ガラガラ


「え?」


いきなり開かれたスライドドアの向こうにはネムさんがいた

もちろん僕は素っ裸である


「電話が鳴ってます」


「え…はい。どうも」


「失礼いたしました。」


バタン


え…えぇ?!



おいおい、何の冗談だいこれは?




電話が鳴ってるからってわざわざ風呂場まで来るか?
君は女で僕は男なんだぞ?!


死神というものはこうゆうことに無頓着なのだろうか


とりあえずまたいきなり彼女が現れることを警戒してドアに注意しながらシャワーを浴びた





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