日雛のお話
□天〜そら〜
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―――夕暮れ時、一人天を眺める少年――――
『〜天〜』
「こんなところにいたのか」
背後から低いけどなぜか安心できる声が響く
「浮竹か」
少年はさも当たり前のように目の前の年上に向かって名前を呼び捨てする
「おいおい、そんなに嫌そうな顔するなよ」
「元々、この顔だ」
さらにしかめっ面する少年に呆れて返す
「あの娘といるときはちかうだろ?」
少年は父とも呼べるくらい年の離れた男から目をそらしまた天を見上げて黙る
「まだまだ子供だな」
失礼な態度をされたのにも関わらず気にすることもなく小さな背中めがけて言葉をかける
「煩ぇよ」
「まぁそうすねるなよ。まだ子供なら頼れるものは頼るべきだ、俺とか松本はお前の味方だ」
「解ってる…でも、」
一瞬少年は苦しそうな顔を見せる
「…俺は子供扱いされんのが一番嫌いだ」
そのまま少年は沈んでゆく太陽を背に向けて消えていった
「…やっぱり子供だな」
本当に言いたいことも言えずわざと誤魔化して
その行為が余計子供らしいとはきっと本人は気付いてないだろう
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