日雛連載
□てをつなごう…それから、きす。下
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桃が家を飛び出してから10時間。
いつまに眠ってしまったのか気付いたら朝になっていた。
さすがにもう戻っているだろうと思って部屋を見ても桃の姿はない。
普通ならもっと慌てるだろう
だけど俺の頭は冷静だった。
そもそも桃が出て行った時に追いかけるべきだったんだろう。
だがそれもしなかった。
心のどこかで桃が俺を置いていなくなるはずがないと思っていた。
物心がついた時から両親はいなくて、それがなぜかも俺はわからない。
里親のもとを点々として施設に行ったり来たりの生活。
それでも桃がいつも一緒にいてくれたからさみしくなかった。
俺が施設も里親も好きじゃないことを桃は知っていた。
だから二年前に二人で独立した。俺は少しでも桃に一人前と認められたくて家事を全てやった。
なのに、いまだに俺は俺達の施設の滞在費やこの家の建築費を誰が出しているのかもなぜ両親がいないかもわからない
そもそも俺と桃が本当に姉弟なのかもわからない
結局俺はずっと桃に甘えていた。
弟扱いが嫌だと言いながらいつまでも桃にとって手のかかる弟でいたのは俺の方だった。
もし俺がもっとちゃんとしていたら今頃桃を見つけているだろうに、俺はこんな時どうしたらいいのかわからない
探しに行くにもあてがない。
「…畜生…情けねぇな…」
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