日雛のお話第2巻

□嘘をつくなら抱きしめて
1ページ/1ページ



言い訳するわけじゃないがその日は機嫌が悪かった。
連日の残業、昼食の幕の内弁当は売り切れ、松本のサボり…

とにかく気を晴らそうと向かったお気に入りの昼寝スポットにあるはずのない人影。


「…おい、邪魔だ。」


誰か、なんて考えずともわかる。これは待ち伏せだ。 
俺がここ2、3日ろくに会おうともせず、おまけに昨日は約束をすっぽかして残業。 
文句でも言いに来たんだろう。
勘弁してくれ。


念を押すが俺は機嫌が悪かった。

「…おい、退け。」

「あたしの名前はおい、じゃありません」

怒ってる。完璧に。
だが俺にも気遣う余裕はない。


「雛森、退いてくれ」


「……」


「桃。」


こんな時の雛森は少し厄介だ。


「退けって」


「嫌です」


「勘弁しろよ、眠いんだ」


「…シロちゃんは、あたしのこと好きですか」


「はぁ?」


「好きですか」


「んなもん、好きに決まってんだろ」


「どこが」


「はぁぁ?」


「どこが好きですか」


「…知らねーよ」


「ちゃんと答えて」


「…全部」


「もっと具体的に」


「あん?」


「言ってくれるまで動きません」
再度繰り返すが、俺はかなり機嫌が悪かった。


「…うざ。」


口をついて出た言葉は地雷だった。


「弾け…飛梅」


瞬間、俺のお気に入りの昼寝スポットは爆炎に包まれて…崩壊した。


「ちょっとやりすぎちゃったかな」


「何考えてんだ、バカ」


「うわ、シロちゃん生きてる!」

「隊長舐めんなよ。つか殺すつもりだったのか」



「シロちゃんが悪いんだもん」



「だからって攻撃することねーだろ」
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ