日雛のお話第2巻
□銀色の月・獅子は眠れず
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冬の夜空は綺麗だ。
月も星も静かに輝きを放つ。
俺たちはあれほど輝く事ができているだろうか。
そんなことを考えながら戸締まりをして隊舎を後にした。
外は凍えるような寒さだったがそれでも満天の星が心を少し暖かくしてくれるようだった。
深夜の瀞霊廷は不気味なほど静まり返り、誰かが電気のスイッチを消したかのような暗闇に飲み込まれていた。
現世ではこんなとき、実体の無い化け物が出るらしいとくだらん恐怖心を抱くそうだ。俺はもちろんそんなものは怖くない。だが怖がるやつもいる。全く理解しがたい。
だいたい何か出るとしたらそいつは俺たちの同胞なんだが。
自室の扉を開けると敷いた覚えの無い布団に誰かが入っていた
一瞬、部屋を間違えたかとも思った
だが部屋の片隅にある斬魄刀は確かに俺の氷輪丸だった
「ん…むぅ…」
布団の中の奴が突然寝返りを打った
俺は驚いて後ずさったが寝返りを打ったために露になった顔を見てため息をついた
そこにはなにやら大きな包みを抱えたままの幼なじみが無防備にもすやすや眠っていた
「おい。」
声をかけても全く起きる気配はない
「雛森?」
反応は無い。
起きていれば睨みを効かせていくらでも追い払うことができるのに。
こうなっては手のつけようがない。
加えて俺はコイツの寝顔に滅法弱い。
そこにいても風邪を引くだけだと思って俺は寝巻に着替えて雛森のいる布団の中へ足を忍ばせた。
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