日雛のお話第2巻
□されど夢現追いたるが如し
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―朝、目覚めて布団から起き上がると襖を開けてすぐ隣の部屋で寝ている妹を起こす。
すやすやと寝入るその姿はいつかの憧れだった母に瓜二つ。
もちろんそんな妹を女として見たことがないと言えば嘘になる。
だけどいつだって俺にとって彼女は絶対に守らなければいけない大切な“妹”だった訳で。
だから阿散井の奴と付き合ってると聞いたときは少からず、安心した。
阿散井は昔からのダチで信頼できる。
大切な妹が何処の馬とも知れぬ輩に奪われるよりはずっと安心だ
特に、市丸の奴なんかよりは。
「むぅ…もう朝ぁ…?」
寝坊助の妹にデコピンをかます
「いぃ…ったぁ〜」
「さっさと起きろよ。遅刻すんぞ」
上目使いで目に涙を溜める妹はそりゃもう脳殺もんの可愛さだったが俺はそれを表に出さずしたたかに言い放つ。
「そーゆー小技が通用すんのは親父だけだからな」
もう一度おでこを人指し指で突っつくと妹も負けじと言い返す
「歩夢と市丸おじさんにも効果絶大だもん」
「気のせい気のせい。」
最近のこいつはぐんぐん女度が上がってたまに母さんより大人っぽく見えることがある。
それを本人も自覚してるのか否かタイミングよく男のツボを掴んできやがる
まったく自分の妹ながら油断できない
だから俺も兄貴らしく妹にいらんお節介をやく。
それこそ親父よりも厳しい小姑の如く。
言い返す言葉を失った彼女は口癖のように毎朝お決まりのセリフを吐く
「もぉ〜おにーちゃん大っ嫌い!」
俺の一日はこうして始まる。
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