日雛のお話第2巻

□微熱‐37.2℃‐
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ここ数日、十番隊で熱風邪が流行っていたのは知っていた。あの松本でさえ高熱でぶっ倒れたくらいだ、これはなかなか手強い。いま奴は四番隊で好きな酒も飲まずに床に伏している


だから十分注意はしていたはずだ。


「あの、日番谷隊長…」


「…なんだ?」


「これ、副隊長が残された書類なんですがこちらも人数不足で;」


「わかった。こっちへ寄越してくれ」


朦朧とする頭を振り絞り積み重ねられた書類に手を伸ばす

きっとまだ、熱はない。

だが喉の痛みと鼻づまりが酷い
おまけに頭も重い

部下たちの分の仕事もこなしているせいでまともに睡眠をとっていないのもいけないんだろうな

だが俺が休むわけにはいかねぇ
せめて松本のやつが戻ってくるまで耐えなきゃな…


あぁ、今雛森は何してんだろ

あいつを抱きしめて良い匂いに安心しながらそのまま眠りたい




「無理は禁物ですよ。十番隊長さん」



これは夢だと思った
聞き覚えのある声が俺の頭上から降ってきた
顔を上げると優しく微笑む雛森がいた


 夢、じゃなかった



「熱は?…ん〜ちょっとあるかな」


雛森は俺の額に手を当てて顔をしかめた


「はい、計りましょー」


有無を言わさず体温計を死覇装の襟元に入れられた



「ほら、ちゃんと脇しめて!ギュって」



すっかり姉貴ぶる雛森
こいつ自分の仕事はどうしたんだ?


ピピッ


「あっ鳴った!何度?」



37度2分…


た、たいしたことねー!!!
なんだよ
これくらいの熱でへばってたのか俺は


「…もう見てないで教えてよ」


そう言いながらも雛森は俺の手から体温計を奪った


「37.2…?たいへん!やっぱり熱あるじゃない!」


価値観の違い…だろうか

俺にはたいしたことなくても雛森にとっちゃ一大事だったらしい


姉貴面もどこへやら今度は泣き出しそうな顔で心配そうに俺の顔を覗いてきた


「ねぇ今日はもうお休みして。残った仕事はあたしがやるから」



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