長い歴史に爪痕を刻む
□好きの瞬間
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次の朝、僕は1人で学校に向かうネムを見つけた
「おはよう」
後ろから声をかけると彼女は驚いたようでびくっと肩を震わせた
「あ、ごめん」
割れ物を扱うように僕は彼女に接した
というか努力した
「いえ、おはようございます」
「一人なんてめずらしいね。井上さんは?」
「今日は当番で先に」
「ああ、なるほど」
それきり僕には話題がなくなって沈黙のまま時間が流れた
ネムは黙ったままだったけれどそれでも僕の隣に並んで歩いていた
なんとも気まずい空気
だけどなぜだか嬉しかった
このまま二人でずっと一緒にいられたら…
「おーっす石田!」
「うわぁ?!」
後ろを振り替えると派手なオレンジ頭がニヤニヤしている
「朝から何なんだ黒崎!気色悪いぞ」
「そりゃこっちのセリフだっつーの!なんだよお前、女の子と登校なんて珍しいこともあるもんだな。あれ?何だネムじゃん」
「おはようございます」
こ、コイツ、僕のハッピータイムを邪魔したばかりかあっさりネムを呼び捨てに…!
「おぉ、そーいや携帯ありがとな!」
「いぇ。」
「携帯?」
「この前携帯壊れちまってよ、ネムが直してくれたんだ」
「携帯を?」
「あぁ、なんだお前知らねーのか。ネムは機械いじりが得意なんだぜ?」
「そ、それくらい僕だって知っているさ!昨日だってうちのCDコンポを…あ…」
しまった。
墓穴を…
「…申し訳ありませんでした」
「いやいやいいんだよ?気にしないで、うん。それよりさ、あのラジカセ!楽しみにしてるから!」
「では今日中になんとしてもお届け致します」
「え?い、いや今日じゃなくても…」
「でもとてもお困りのようですし…」
あーもう!これじゃ嫌味じゃないか!!
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