人間・死神・破面・仮面のお話

□深窓の姫君
3ページ/11ページ


門番に言う、 

「桃様の食事だ。」


岩のようにがっしりした体型の門番二人はさっと門を開ける。


「どうぞお入りください。」




扉を開くと暗い螺旋階段


この上に姫はいる。



料理が冷めてしまわないうちに、と急ぎ足で駆け上がる


しばらく行くと南京錠のかかった扉が現れた 


ここが姫の部屋 

ここが姫の檻


ネクタイを締めなおして
軽くノック


「どうぞー」



可愛らしい声が響いた。 

ゆっくり戸を開ける

「桃様、お食事です。」



塔で唯一ある小さな窓を覗き込み黒髪がさらさらとなびいている少女に僕は見とれた。 


これ以上綺麗なものを僕は見たことがない。 


「わぁいい匂い!今日は何スープ?」


僕の方を見るなり、桃様は満面の笑みで近寄ってきた。 



「オニオンスープを作ってみましたがお口に合うかどうか…」


「すごく美味しそう。ね、もう食べてもいいかしら?」


「ええ、もちろん」


わーい、と姫はテーブルに座って行儀良く料理を口にした。 

誰に習ったわけでもないのに上品な食べ方をするのは貴族の血故なのか 



「すっごくおいしいよ、吉良くん!」


太陽のような笑顔
これを見れるのは僕だけの特権


僕はこのためだけに働く
毎日、毎日
ただひたすらに。 

僕の命をこの姫に捧げる 
それが、僕の使命 

だから、桃姫は僕が何があっても守る 








.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ