物語4

□番外編
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ずっとずっと手を伸ばして待っていた。
いつかこの手を握って俺を助けてくれる誰かを…


―――― 今から数年前。


覚醒ダーク
『やはり、純粋な奴から叫び声を聞くのは楽しいなぁ?なぁ、もっと泣けよっ!!辛いんだろ?』


あの頃の俺はいつも城を抜けて外に飛び出して通りすがりの人を捕まえ、心から発する叫び声を聞いていた。


覚醒ダーク
『チッ!!また、気絶してしまったのか?役に立たない奴だ!!』

そして相手が気絶すると、何事も無かったようにその場を去った。
そう、あの頃は俺はそれでしか独りだった寂しさを紛らわす方法が無かったんだ…。
城に帰ればファントムブラスタードラゴン様は普通にお帰りと言ってくれたが…
俺が欲しいのはそんな言葉じゃない…


覚醒ダーク
『また、独りだ…』


そして部屋で孤独になる…
孤独になると周りが真っ暗闇で何も見えない。
そうだ、俺は孤独で何も心を持たない影の黒騎士…
ロイパラに居る英雄と称えられた光の騎士であるアイツの影なんだ…
誰も俺を知らない。
俺はずっとこのまま…


覚醒ダーク
『一生を終える…』


きっとそんな気がする。
窓を開けて二階から手を差し伸べてみた。
誰かが手を握ってくれるわけでもないが伸ばす…
この手でいつか何かを掴めたら俺は孤独では無くなるかなという僅かな希望を願って涙を流してギュッと拳を作り、窓を閉める。


覚醒ダーク
『俺には光は綺麗すぎて、掴めない。』


アイツには掴めて俺に掴めなかったもの…
“光”一文字のこの言葉が俺には重たく感じた。
俺は闇に堕ちた。
二度と光には帰れない。
アイツは俺とは違う世界を歩み出していつかはその人生を笑顔で旅立つのだろう…


なら…俺は?


覚醒ダーク
『俺は…きっと、闇に飲み込まれてアイツとは違う世界に行き最期までっ…』


ポロポロと誰も居ない部屋で涙を流して独り言を言う。
物心ついた時から時期なる王と言われ、俺はグレード2なのに周りから様付けされながら生きてきた。
きっとアイツはそんな位など無く皆に友達のように可愛がられているんだ…


覚醒ダーク
『住む世界が違う…』


そう違うんだ。
何度も暗示をかける。
アイツとは違うと…


覚醒ダーク
『っ…俺だって幸せになりたいんだっ…アイツ以上にっ…こんな独りじゃなくてっ…』


誰か…
誰でも良いから俺を助けてくれ…
胸が苦しい。
涙が止まらない。
ファントムブラスタードラゴン様には言えない。
言えない。誰にも…
俺は可哀想な奴ではない。
違うんだ。


―――――――――――


起きると朝になっていた。
多分アレから寝ていたのだろう…
覚えていない。
覚えていた所で何も得など無いのだから。


覚醒ダーク
『いつもの日が続くだけだ。』

そして俺は今日も城の外へ飛び出した。


覚醒ダーク
『帰った所でジャベリンやカロンしか居ないからな…いつかはこの門にも…』


良い奴が来ると良いが…
きっと此処が嫌になりまた俺とファントムブラスタードラゴン様しか居なくなるだろう。


覚醒ダーク
『今日は人気が少ないな…』


ガサガサと草をかき分けて奥へ進む。
すると、大きな広い場所に抜け近くには切り株があった。


覚醒ダーク
『切り株…』


切り株に触れようとした瞬間に今まで聞こえなかった心の叫び声が聞こえた。


覚醒ダーク
『っ…!!』


大きくなる声に堪えきれない…だが、此処で倒れる訳には…

『闇の騎士ブラスターダークよ…』


誰だ?俺を呼ぶのは…?
耳を押さえながら俺は辺りを見渡したが姿が見えない。


『そなたの望む声を聞かせてやっているのに、何故そんな表情をしている。』


覚醒ダーク
『っ…こんな…急に…ア゙ッ…クッ…』


ダメだ、涙が…出そうだ…。

覚醒ダーク
『誰かっ…っ…俺を…ウッ…助けてくれー!!』


俺は助けを呼んだ…
来ない助けを…
助けに来てくれるわけがない…こんな俺なんて…
ダメだ…
意識が…


『大丈夫かっ!!』


瞬時声が聞こえた。
ガシッと俺は身体を誰かに支えられた。
ぼやけて見える視界に見えた人物…
真っ白な鎧で髪色が金色…
白騎士…


『どうしたんだ!!何があったんだ?』


問いかけられる…
だけど俺は上手く声が出せなかった。
変わりに手を差し伸べた。
コレが夢でなければきっと…

『大丈夫だ…もう、大丈夫だ。我がお前の側に居てやる。』


ギュッと手を握られ、大丈夫だと言われた。
人の暖かさを初めて感じた。 そして俺は、気を失った。
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