捧げ物

□アルバム
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 皆さんにとって想い出の曲はありますか?

 学芸会で歌った曲。
 この曲が流行った時、かけがえのない人に出会った。
 好きな人が好きだと言っていた曲。

 世界は沢山の音楽であふれています。

 
―そうこれは、かけがえのない曲に出逢った、
 ある二人の物語。




「ヒナ! おはよ! 昨日のMデラ観た?」
「おはよ。そよちゃん。観た観た!」
「昨日、リンちゃん出てたじゃん! 今度の新曲いいよね〜!」
「うんうん。そだね〜!」

 いつもと変わらない朝。
 いつもと変わらない風景。
 ダルそうに歩く生徒もいれば、友人とのおしゃべりに夢中になっている、生徒もいる。

「でね。カッコ良かったよね!」
「ね!」
「あ! 陽! おはよ〜!」
「ヒ〜ナ〜! 聞いてよ〜」
「あはは。ど〜した〜?」

 陽の周りには人が集まる。
 優しくて、明るくて、気がきいて、可愛くて…
 女子にも男子にも人気のある女の子。
 自分だけのものにしたいと思う人間はとても多い。


「…ごめんなさい」
「え? なんで?」
「友達でいいじゃん? 友達でいようよ」
「…日比野か? 結城、いつも日比野といるだろ? 日比野のこと好きなんだろ?」
 陽は言葉に詰まった。
 日比野とは小学校からずっと一緒の日比野響のことだ。
 もう十年の腐れ縁が続いている。
 
 ここでそうだと言ったら、この男は消えてくれるだろうな。
 でも、次の日には陽は響が好きということで噂が広まって…
 それが響の耳に入ったときどういう反応をするだろう。
 少しは照れたりしてくれるのかな。…いや違う。きっとめんどくさそうにため息をついて…
 
 陽はここまで考えてすごく腹が立ってきた。

「違う! 響なんて関係ないもん!」

 気がついた時には怒鳴っていた。

 しまった。
 陽はそう思った。

「ヒナ! あんた二組の斎木君フッたんだって?」
「え〜? なんで〜? 斎木君カッコいいのに〜!」
「もったいな〜い!」
 陽の周りを友人たちが囲む。
「いや、だって、友達とはいってもそんなに交友ないし。よく知らないし」
「そんなの付き合ってく内に知ってくんでしょ〜!」
 陽が言い訳すると周りの子が怒った。
「まぁ、まぁ、陽が駄目だって思ったんだから仕方ないよ」
「も〜。また芽衣ちゃんは、ヒナに甘いんだから〜」
 芽衣が助け船を出してやると、陽への追及はやんで、違う話に移る。

 
 
 

 
 

 
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